「サポーターは不快にしかなりませんよ」「適当に作られた曲としか思えませんでした」。サッカーJ1・大分トリニータの新たな公式応援ソング「トリニータイソウ」に、サポーターのひんしゅくを買う騒ぎとなっている。
批判を受け、クラブ代表が声明を発表する事態に発展。「意見は真摯に受け止め」るとした上で、同曲が浸透するよう努める意思を示した。手掛けた総合プロデューサーも声明を出し、「厳しいご指摘があることは承知の上で、世に送り出した作品」と批判を受け止める構えだ。波紋を広げる「トリニータイソウ」とは一体どんな曲なのか。
「ケツのチームと思われたら困るのですが」
「トリニータイソウ」は2019年3月30日、ホーム・昭和電工ドーム大分で開催のJ1第5節・サンフレッチェ広島戦のイベントで初お披露目された、子ども向けの応援ソング。場内で放映したプロモーション動画は同日YouTubeでも公開され、子どもから大人までのサポーターや大分の選手らが和気藹々と振り付けを披露する内容になっている。
疑問視されたのは「歌詞」だった。歌い出しから「ケツ出せプリプリ」「うんちかますぜブリブリ」といった言葉が連続するためだ。その後応援の言葉が続くが、最後は唐突に「おけつぷり」で締められる。
クラブ公式応援ソングでこうしたフレーズが並んだことに、サポーターと見られるネットユーザーが憤慨。ツイッターでは、
「トリニータイソウが下品で気持ち悪い」
「二度とドームで流さないでほしいです他サポ初めて見る人のトリニータに対するイメージダウンになるだけですよ?」
「ケツのチームと思われたら困るのですが」
「あの歌で侮辱された気分で一杯です 失礼を承知ですが私が聞いた上で、ただあのワードを入れてあとは動物でも入れておけばウケるだろうと適当に作られた曲としか思えませんでした」
といった批判の声が相次ぐことになった。ただ、
「子ども向けという事を考えたらまあそんなもんなのかなという所。まだサッカーをよくわかってない子どもの導入口としては悪くないんじゃないかな?」
と理解を示す声もある。
「子供達も大分トリニータを知るきっかけになるものとして制作する決断」
物議を醸す中、クラブを運営する大分フットボールクラブが4月3日、榎徹・代表取締役名義で公式サイト上に声明を発表した。「『トリニータイソウ』お披露目後に、YouTubeでも公開したところ、SNS等にて歌詞・振付に対するご意見・ご指摘を頂戴しており、当社の考えを改めて述べさせていただきます」として、
「当社としましては、『トリニータイソウ』は、ターゲットを子供達にフォーカスし、大分トリニータをまだ知らない子供達も大分トリニータを知るきっかけになるものとして制作する決断をした次第です。子供達が面白がるキーワードや、動物を取り入れた言葉遊びの部分も含めて、様々なご意見がある事を想定した中で決定したものであります」
と制作の意図を伝えた。2年前にイベント企画会社「apple ribbon」の提案を受け、協議を重ねてきたという。
その上でクラブは、
「頂戴しておりますご意見は真摯に受け止め、今後の企画に活かしてまいりたいと考えております。今後、子供たちが歌って踊れるものとして、大分トリニータとともに浸透していければ有難いと思っております」
と公式応援ソングとして継続する意思を示している。「引き続き、色々な事にチャレンジしていく所存ですので、ご理解・ご支援をお願い申し上げます」と結んでいる。
「子ども向け」であることを示したこの声明に対しても、ツイッター上では、
「子供だけ楽しめば良いのではなくて、全てのトリニータサポーターに納得してもらえるような物になって欲しかったです」
「そんな馬鹿にしてるような愛がない歌詞が例え子供達に流行ったとしてもサポーターは不快にしかなりませんよ」
と批判が止まない。
「『あの』部分は、どうにかならないものか」とクラブ躊躇も、、、
一方、「トリニータイソウ」の総合プロデューサーで企画提案したapple ribbon代表の鈴木セリーナ氏も5日、自身が運営するウェブサイト「SerenadeTimes」で声明を発表した。作詞を依頼したお笑いタレント・あべこうじさんには「子供たちがゲラゲラ笑って喜ぶ『あのワード』を入れてほしい、とお願いしました」といい、その理由をこう明かす。
「というのも私は、あの国民的ヒットとなった『妖怪ウォッチ』の『ようかい体操第一』のヒットの裏側を制作サイドから見ていたので、大人が口々に『子供に歌わせたくない』という『あれ』が、これから大分トリニータサポーターになる子供たちの、今のキラーワードであることを知っていたからです」
18年秋ごろにクラブ側に歌詞を出すと、「『トリニータイソウ』の『あの』部分は、どうにかならないものか、という指摘が返ってきました」という。だが、「子供を含め全国民に知ってもらうためには、あのキラーワードはあった方が良い」と説明し、同年末ごろに歌詞が決定した。
公式発表直前にメディアを限定してPVを流したところ、「私の予想は的中し、当日には数名の子供たちはすでに、『その』部分だけは踊れるようになっていました」と好感触を得たという。公式発表後も「とても良かった」「子供がすごく喜んでいる」といった好意的なコメントが多数寄せられたことを明かした。批判的な意見も多いが、
「厳しいご指摘があることは承知の上で、世に送り出した作品です」
と批判を受け止める構えを見せている。