東京証券取引所が検討する、「4つ」の株式市場を「3つ」に再編する構想。海外投資家のマネーを呼び込む市場からスタートアップ企業を育てる市場まで、企業に規模や発展段階などに応じて整理し、上場企業の持続的な価値向上を促すのが表向きの目的だ。
ただ、その背後にあるのは、もう一つの大きな狙いだ。東証1部が基準緩和で肥大化したのを是正することだ。実際の再編では「1部上場」のブランドを失う企業が多発することになり、スンナリ進む保証はない。
なぜ「1部」は肥大化したのか
東証は2018年10月に「市場構造の在り方等に関する懇談会」(座長・神田秀樹学習院大大学院教授)を設置して検討。その議論を踏まえて2019年3月27日、論点整理を公表し、改革の方向性を示した。
それによると、再編後の新たな市場区分として、(1)国際的に投資を行う機関投資家を含めた広範な投資家の投資対象となる市場、(2)一般投資家向けの市場、(3)高い成長性を有する企業向けの市場――を提示。それぞれの市場の特性に見合った時価総額や利益水準などの基準を設け、基準を満たさなくなった企業を上場廃止にしたり、他の市場に移行させたりする。現在の上場企業は、新たな3市場のいずれかへの上場を申請し、数年かけて新市場に移行する。
東証には現在、1部、2部、ジャスダック、マザーズの4市場がある。大阪証券取引所との合併で大証にあったジャスダックが加わったこともあり、各市場のコンセプトがあいまいになったこともあるが、何より、1部の肥大化が問題になっていた。
各市場の上場企業数は、1部=2128社、2部=493社、ジャスダック=725社、マザーズ=275社。
なぜこうなったのか。1部は新規に直接上場するのに必要な推定時価総額は250億円以上で、リーマンショック後に緩められたとはいえ、それなりの大きさだ。ところが、2002年、2部(新規上場の時価総額20億円)とマザーズ(同10億円)からは、時価総額40億円以上で昇格できるという内部昇格の基準を新設した。上場廃止になる基準も10億円と甘くなっている。当時は大証とのベンチャー企業の奪い合いで優位に立つ狙いがあった。この結果、多くの企業が内部昇格を選び、上場企業約3650社の半数以上が1部になり、その7割が2部かマザーズ経由で、「最上位市場としての1部のブランドがあやふやになった」との声が出ていた。