果たせなかった夢は新たな世代へ
01年にカナダ・エドモントンで開催された世界選手権でも小出氏はある予告をしていた。1万メートル英国代表のポーラ・ラドクリフさん(45)のレースを観戦していた時とのこと。ラドクリフさんはこのレースで4位に終わったが、小出氏は「この選手がマラソン走ったら速いよ。誰もかなわないよ」と語った。当時、参考程度に記者の頭の片隅に留めていた言葉だが、2年後にこれが現実のものに。02年にマラソンに転向したラドクリフさんは03年に世界記録を樹立。2時間15分25秒は15年以上経った今でも更新されていない。
リクルート、積水化学で監督を務めた小出氏は、01年6月に佐倉アスリート倶楽部を設立し、以降、指導者として女子陸上の発展に貢献してきた。女子マラソン史に輝かしい実績を刻み込む小出氏だが、かつてこぼした言葉が印象に残っている。「いつかは男子選手を育ててみたい」。女子マラソンで世界選手権、五輪を制した名将の最後の夢が、男子選手を五輪の表彰台に上げることだったのだろう。
平成の始まりととともに女子マラソンの一時代を築いた小出氏。20年東京五輪を控えて第一線から退くことになったが、小出氏が果たせなかったもうひとつの夢は、新たな世代の指導者によって受け継がれるだろう。
(J-CASTニュース編集部 木村直樹)