「響 新宿サザンタワー店」入り口前
東京・JR新宿駅南口にあるレストラン「響 新宿サザンタワー店」。高級感あふれる落ち着いた店づくりで、和食を中心に多彩なメニューを提供する。
「響の料理は素材ありき」と話すのは、この店で料理長を務める小野寺清彦さん。こだわって選ぶ食材の中に、福島産の牛肉や鶏肉、野菜が並ぶ。「料理のプロ」である小野寺さんが最初に挙げたのは、会津の伝統野菜「余蒔(よまき)キュウリ」だった。
「こんなにおいしいキュウリは初めてだ」
余蒔キュウリのおいしさについて語る、料理長の小野寺さん
「食べてみたら、『何だこれは! こんなにおいしいキュウリは初めてだ』と思いました」
「余蒔キュウリ」に出会った時の感動を、笑顔を交えつつ明かした小野寺さん。伝統野菜とは、農林水産省のウェブサイトによると「その土地で古くから作られてきたもので、 採種を繰り返していく中で、その土地の気候風土にあった野菜として確立されてきた」野菜の品種。余蒔キュウリも生産地の個性をそのまま引き継ぎ、東京のような大消費地のスーパーに並ぶことは、まずない。
「キュウリは皮が傷みやすいので、輸送の際に腐らないようにと皮が厚い品種が栽培され、流通していることが多いです。余蒔キュウリは皮が柔らかく、そこがおいしいのですが、輸送の段階で腐ってしまうので、地元以外には出回らない」
現在、国内では、長時間輸送に向かない伝統野菜は消えつつあるのが実情だと小野寺さん。育てるにも手がかかる。それでも伝統野菜を存続させるべく、こだわりを持って栽培を続けている農家と出会い、リスペクトが生まれた。何よりも、素材として一級品なのだ。
「響」で、こだわりを持って作られている福島の食材を多くの人に味わってもらいたい――。小野寺さんは、昨年の福島フェアの際にメニューに余蒔キュウリも取り入れ、酢の物にして提供した。「皆さん、おいしく食べてくれました」。
伝統野菜である「余蒔キュウリ」
愛情込めて育てられる「福島牛」
「響」の人気メニュー「福島牛リブロース水煙蒸し じゅうねんだれ」。やわらかな肉質や風味の良さから、福島牛は「牛肉の傑作」とも呼ばれている
昨年の福島フェアにあたり、小野寺さんは福島を訪れている。その際、最も印象的だったのは、福島牛を育てる肥育農家の愛情を込めた姿勢だったという。
一般的な牛と比べ福島牛は肥育期間が長く、その分手間もかかる。しかし肥育農家はその努力を惜しむことなく、「一級品」といわれる福島牛を丁寧に育て上げている。
そうして育てられた福島牛には、肉の旨味を示す「オレイン酸」の含有量が多い傾向にあり、これまで数々の賞をも受賞している。去る2019年2月15日には、東京都中央卸売市場食肉市場で開催された第54回肉用牛枝肉共励会でも、最優秀賞となる農林水産大臣賞を福島牛が受賞しているのだ。
福島牛は、サーロインと内ももを使っている。「内ももは赤身で硬いイメージがありますが、福島牛の場合は柔らかい。福島牛の良さをもっとお客様に知っていただきたいですね」。
野菜や福島牛と共に、福島を代表する鶏肉も「響」のメニューを飾る。会津地鶏をはじめ、一時は川俣シャモも扱った。会津地鶏は、全国的にブランド力が強い「比内地鶏」に匹敵するうまみと食感があるという。
こだわりの生産者が育てた食材を、これまたこだわりの料理人が選び、調理していく。「良いものはどんどん使っていきたい」と、素材ありきのメニュー作りに、小野寺さんは今後も励んでいく。