銭湯絵師見習いとしてメディアの脚光を浴びた若い女性が、イベントで虎の絵を描いたところ、盗作の疑いが指摘された。
イラストレーターも自らの絵と酷似していると訴え、女性は、ツイッターに謝罪文を投稿した。
「微妙に変えてあるところがなんとも」
「Be creative」。こんなタイトルの下に虎の絵が描かれたパネルの横で、腕を組んだポーズで立っている。
絵を描いたこの女性は、東京芸大大学院でデザインを専攻している修士課程1年生の勝海麻衣さん(24)だ。
勝海さんは、3人しかいないという銭湯絵師に弟子入りしたと、2018年夏ごろに新聞などで紹介された。同時に、ファッションモデルもしており、才色兼備として大きな話題を集めている。
19年3月24日には、東京・渋谷で行われたライブペインティングのイベントで、大きなパネルにカラフルな虎の絵を描いて見せた。勝海さんは、ツイッターでもその様子を紹介したが、その直後から、イラストレーターの猫将軍さんが12年に描いた絵と酷似していると指摘が出た。
猫将軍さんも25日、指摘を受けて「これは...」と驚きを示し、「微妙に変えてあるところがなんとも」「精一杯ならせめて自分の絵を」と苦言を呈した。
猫将軍さんの絵は、「阿吽(あうん)の呼吸」と使われる言葉を元に、虎の動を描いた「A(阿)」と静を描いた「HUN(サンスクリット語の吽の読み方)」だ。猫将軍さんは、絵の構図が「あまりにもまるごと」と訴えている。
その後、勝海さんから謝罪のメールが来たと明かし、「この件は終わりです」とつぶやいた。本人は、たまたま似ただけで、似せる意図はなかったと説明したという。
ツイッターに謝罪文を掲載
ところが、ツイッター上では、勝海麻衣さんがプリントしたような紙を持って絵を描いている画像が、イベント参加者とみられる人から投稿された。紙の部分を拡大すると、「HUN」のタイトルの絵に描かれた上の部分とほぼ一致しているようだった。
このことを受けて、猫将軍さんは、自分の絵をそのまま写して描いている疑惑があるとして、勝海さんに再びコンタクトを取った。勝海さんからは、謝罪のメールがあったとしたが、試行錯誤した結果、似てしまったとの説明だったという。これに対し、猫将軍さんは、「納得できるわけないでしょう」と怒りを露わにしている。
勝海さんは、3月29日になって、ツイッターにお詫び文の画像をアップした。そこでは、「先日、私が参加させて頂いた渋谷でのイベントにて描いた絵が他の作品に酷似しているというご指摘を頂戴いたしました。まずはお騒がせをし、ご迷惑をおかけしたこと心よりお詫び申し上げます」と謝罪したうえで、今後について、「頂いたご指摘を真摯に受け止めまして、今後はそういったご指摘を再度頂戴することの無いように、自分自身を常に律しながら精進していきたいと考えております」としている。イベントについてのツイートも、同時に削除したことを明らかにした。
しかし、猫将軍さんの絵を写したかどうかについての言及はなかった。
今回のイベントは、大正製薬の炭酸飲料「RAIZIN(ライジン)」をPRするためのもので、同製品の公式ツイッターも29日、お詫び文の画像を投稿した。「ご指摘を受け、初めて弊社もその状況を理解した」とし、真摯に受け止めて、今後はそのような事態を招くことがないようにしたいとしている。勝海さんの絵についてのリツイートも削除したことを明らかにした。
勝海さんに対し、ネット上では、「画力がある方だと思うので、今回の件は素直に謝って、これを機に再出発すればいい」と好意的な声もあったが、厳しい声の方が多い。「偶然似たは無理があるな」「自分風にアレンジすればバレないし怒られないと思ったんだろうか」「お騒がせした事より先に謝る事があるんじゃないか」などと疑問がくすぶっている。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)