慣れないパンプスや革靴を履いて引き起こされる「靴ずれ」は、就職活動中の大学生らにとって悩ましい。SNSでは「#KuToo」というハッシュタグも盛り上がりを見せる。
そんな現状を改善したいと、医療・ヘルスケア事業大手のジョンソン・エンド・ジョンソンが新たな試みに打って出る。
それは、「スニーカー」での就活を応援するという「スニ活」。同社への就活は「スニーカー着用OK」と明示したほか、「企業に向けてもこの現状に一石を投じたい」として靴をめぐる就活慣行に提案する。足を痛めなければバンドエイドが使われないことになりそうだが、なぜ今回の施策を打つのか。
「就活生の靴ずれをなくす活動、一緒にはじめませんか?」
ジョンソン・エンド・ジョンソンは2019年3月26日、同社の絆創膏ブランド「バンドエイド」を通じ、就活時のスニーカー着用を提案する「#スニ活」キャンペーンを開始すると発表。就活生を応援したいとして、「就活時の窮屈な足元にスニーカーという新たな選択肢と自分らしいスタイルを提案」すると宣言した。
背景にあるのは就活生が直面する悩みだ。「女性のパンプス着用や男性の革靴による靴ずれは、就活に集中したい学生の頑張る一歩を苦しめている現状がSNS上でも伺え、話題になっています」として、より楽なスニーカーの着用を提案。同社への就活はスニーカー着用が「もちろんOK」で、さらに「企業に向けてもこの現状に一石を投じたいと考えています」という。
施策の一環で、東京メトロ・大手町駅の地下では4月15日からの1週間、計153面の広告を掲出する。複数パターンが用意されており、「靴ずれで血を流しながら就職活動って、おかしくないですか?」など社会に向けたメッセージのほか、
「人事部のみなさま 就活にスニーカーもOKにしませんか?」
「通りすがりの人事部のあなた! 就活生の靴ずれをなくす活動、一緒にはじめませんか?」
といった、採用活動をする企業に向けた提言もある。こうした広告は東京都内の他の一部駅でも展開する。
スニーカーをただ勧めるだけではない。大型商業施設を運営する丸井グループとの協力で、スニーカーを取り入れた就活のコーディネートも提案する。丸井は着心地、履き心地の快適さを重視したビジネスファッションブランド「ビサルノ」などを展開しており、ジョンソン社の「スニ活」の主旨に賛同したという。特設サイトでは男女それぞれのスタイリングを複数パターン紹介しており、革靴ではなかなか見られない「白色」のスニーカーを合わせているものもある。
昨年は就活の「靴ずれ」でCM作ったが...
なぜバンドエイドがこうしたキャンペーンを行うのか。ジョンソン・エンド・ジョンソンの担当者は28日、J-CASTニュースの取材にこう話す。
「元々バンドエイド キズパワーパッドには『靴ずれ用』の商品があります。去年の3月はテレビCMで、就活を頑張る中でパンプスの靴ずれができてしまった女性に、友人がバンドエイドを渡し、父親が安心するというストーリーでコミュニケーションを取りました。
しかし今年は、そもそも足を痛めないように、足への負担が少ないスニーカーの着用を支持するコミュニケーションを提案しました」
2月ごろには「#MeToo」運動にならい、「靴」とかけてパンプスなどの着用に反対する「#KuToo」運動がツイッターで盛り上がりを見せた。「SNSでこうした流れを拝見すると、今の社会のニーズにマッチしているとも言えるのではないでしょうか」と担当者は話す。
それにしても皮肉というべきか、足を痛めなければバンドエイドは使われない。それでも「スニ活」の提案をすることについては
「確かに売れなくなるかもしれません。ですが、バンドエイドは『がんばる人の、一番近くで』応援したいというブランドミッションを掲げています。これを第一に考え、靴ずれの原因を減らし、就活に立ち向かう学生たちを応援したいと考えています」
と話している。