就職人気ランキングで、印刷大手の大日本印刷(DNP)がトップ10に入った。数年前は80番台だったが、年々順位を上げていた。
「出版不況」と言われて久しく、出版と密接な関係がある「印刷関連」業界にも厳しいイメージがあるからか、ツイッターには「なぜに大日本印刷?」と、そのトップ10入りを不思議がる声も見受けられた。その理由分析について、ランキングを発表した就職情報会社の学情と、当の大日本印刷に話を聞いた。
首位は6年ぶりの「伊藤忠」
学情は2019年3月18日、20年春卒業予定の大学生らの就職人気ランキング(9500人弱からの有効回答を集計)を発表した。伊藤忠商事が6年ぶりに首位になるなど総合商社の人気が高いことや、航空大手は乗務員の飲酒問題でイメージがダウンしたからか、順位を下げたことに注目が集まった。
そんな中、前年発表の21位から急上昇して9位に入った大日本印刷(業界区分は「印刷関連」)の躍進にも関心が寄せられた。直近の5年分(2014年発表<15年卒予定>分以降)をみると、42位、60位、83位、63位、21位と続き、今回の9位につながる。ここ数年は急上昇傾向となっている。大日本印刷は、凸版印刷とともに国内印刷業界の2強体制の一角を占める。
ランキングが発表されると、ツイッターには「なぜに大日本印刷?」といった声が寄せられていた。「出版不況続く(以下略)」(日経新聞電子版、19年1月25日)といった報道を目にすることが多く、出版と関係が深い印刷業界も厳しい状況である、というイメージがあるからか、意外だと感じたようだ。
実際、日本印刷産業連合会の公式サイト上で「印刷市場の動向」の項目をみると、「工業統計による印刷産業の出荷高は、2016年には5兆2752億円となり、(04年からの)12年間で1兆9300億円の減少となりました」と、その出荷高の減少傾向を指摘している。
当の大日本印刷に聞いてみると...
こうした状況下で今回、大日本印刷がランキング・トップ10に入ったことについて、どう分析しているのか。J-CASTニュースが、ランキングを発表した学情に話を聞いた。同社の執行役員、乾真一朗氏は、出版業界の人気上昇も含めて、
「コンテンツ・ビジネス、特にデジタルやIT分野の仕事に興味や関心を持つ学生が増えている印象です」
と語った。今回のランキングの上位100社を見ると、登場する出版大手4社はいずれも順位を前年より上げており、中でも講談社は13位(前年23位)、KADOKAWAは14位(同28位)と、トップ10目前まで迫っていた。
乾氏はさらに、電子書籍やVR(仮想現実)といった、出版や印刷業界のデジタル・IT面での取り組みが、若い世代にとって身近に感じられているようだと指摘。会社側の採用の取り組みとしても、上位の社では、こうした先端の技術や取り組みに力を入れている、というアピールに熱心であることも奏功したとみている。
当の大日本印刷はどう受け止めているのか。J-CASTニュースの取材に対し、同社の人財開発部は、今回のランキングでトップ10入りした感想について、
「とてもうれしく思います。順位に一喜一憂せず、これからも粛々と取り組みを進めていきます」
と回答した。ここ数年の急上昇の理由について質問すると、
「弊社の幅広い事業領域や、新規事業への取り組み、働き方改革活動など、毎年少しづつではありますが、学生さん達に知っていただくことができた結果だと思っております」
との分析を示した。
同社には大きく分けて3部門の事業領域があり、出版関連事業を含む情報コミュニケーション部門のほか、生活・産業部門、エレクトロニクス部門がある。新規事業としては、ライフサイエンス分野への取り組みを強化しているという。