慶應義塾大学の長谷耕二教授(生化学)と江崎グリコらが2019年3月19日、東京都内で腸の健康に関する研究セミナーを開催した。
キーワードは、近年注目が集まる「プレバイオティクス」だ。
長谷耕二教授
体脂肪率の抑制に効果
「人間は大量の微生物を保有する入れ物です」――。長谷氏はセミナー冒頭、こう話した。その言葉通り、腸内にすむ腸内細菌はおよそ100兆個あり、さまざまな種類から構成されているという。
ただし個人差もある。40人の健常者を対象にした研究では、腸内細菌は20兆~120兆個とバラつきがあったという。長谷氏は、腸内細菌はエネルギーを生み出したり、免疫・代謝の調整を担ったりするため、腸内環境の維持・改善は重要だと説いた。
セミナーでは、腸内細菌に有益な作用をもたらす微生物として、「プロバイオティクス」が紹介された。乳製品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌がこれにあたる。
近年では、「プロバイオティクス」にイヌリンやペクチンといった大腸の細菌の栄養源となる食品成分「プレバイオティクス」を合わせた「シンバイオティクス」が注目を集めているという。
シンバイオティクスの継続摂取による体脂肪率の抑制、敗血症合併症の予防、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の改善といった研究事例が、長谷氏によって示された。
江崎グリコも「シンバイオティクス」に注目
製菓大手の江崎グリコもシンバイオティクスの効果に期待する。同社は独自のビフィズス菌「BifiX(ビフィックス)」と水溶性食物繊維の一種「イヌリン」が入った飲料を使って臨床試験を行い、BifiX単体よりもイヌリンを組み合わせることで腸内ビフィズス菌が増加するとの結果を得た。
セミナーで登壇した江崎グリコ健康科学研究所の馬渡隆氏は、「BifiX単体だと菌の増殖に個人差があり課題だったが、シンバイオティクスは個人差を超えて腸内環境を改善する手段になりえることがわかった」と期待を込める。
馬渡隆氏
同社は研究結果を踏まえ、主力のヨーグルトブランド「BifiXヨーグルト」を3月25日から全面改良する。従来商品に食物繊維を加え、健康面でのサポートを強化した。
リニューアルされた「BifiXヨーグルト」
江崎グリコマーケティング本部の齋藤康雄氏はJ-CASTニュースの取材に、「30~50代の健康意識が高い方をターゲットにしました。仕事などで忙しい方に日々の手軽な健康予防として購入してもらえれば」と話す。