トヨタ自動車が米国で計画する投資を大幅に拡大する方針を打ち出した。
2021年までに、新たに7億5000万ドル(約840億円)を5工場に投じ、約600人を雇用する。北米自由貿易協定(NAFTA)を見直した新協定(USMCA)で、部品の域内調達率を75%以上に高める必要があることを見据えたもの。投資拡大を求める米トランプ政権に貢献姿勢をアピールする狙いも込められている。
トランプ大統領のツイートを引き出した大型投資
トヨタは従来、2017~2021年の5年間に米国で100億ドル投資する計画だったが、これを130億ドルに増額する。5工場への7億5000万ドルはその中核をなすものだ。
具体的には、ケンタッキー州で2億3800万ドルを投じ、この5月から高級車ブランド「レクサス・ES」のHVを、2020年1月からはスポーツ用多目的車(SUV)「RAV4」のHVを、それぞれ生産する。年産能力はESが約1万2000台、RAV4が約10万台。アラバマ州やウェストバージニア州の工場ではHV用変速機やエンジンなどの生産能力を上げ、ミズーリ州とテネシー州の工場では鋳造品を増産する。豊田章男社長は15日、米ワシントンで講演し、「どんな事態になってもトヨタは米国に残る」と述べ、米国への投資を続ける考えを強調。豊田社長の講演の前、トランプ大統領はトヨタの発表を受け、ツイッターで「おめでとうトヨタ! 米自動車産業の労働者たちにとってビッグニュースだ!」と、歓迎の投稿をした。
実は、トヨタには苦い経験がある。2017年1月の大統領就任直前のトランプ氏から、メキシコの新工場建設を「(メキシコ新工場は)ありえない」と批判された。あわてたトヨタは直後、5年間で100億ドルの投資計画を発表。その後、マツダと共同で16億ドルを投じてアラバマ新工場を建設することを打ち出し、着工したが、トランプ政権から明確な評価を得られてはいなかった。その意味で、今回、トランプ大統領のツイートを引き出したことで、「トヨタの狙いは、ひとまず当たった」(業界関係者)といったところだ。