回転寿司チェーン国内2位の「くら寿司」を運営する、くらコーポレーションの株価が業績悪化を受けて下落し、3月11日に2カ月半ぶりの安値をつけた後も大きく反転できずにいる。
徹底した合理化で「1皿100円」を維持して顧客を呼び寄せてきたが、人件費・原材料費の高騰など外食業界に共通する問題に引き続き直面しており、足元では好材料を見出しにくいのが実情だ。
人件費の増加、海外出店も影響
くらコーポの株価は3月4日から6営業日も下落が続いた。4日の前営業日である1日の終値は6010円。6営業日後の11日の終値は5010円で、6日間の下落幅はちょうど1000円、下落率は16.6%に達した。その後も株価は足踏みが続き、5200円前後のラインをうろうろしているのが現状だ。
株価下落を促したのが、5日に発表した2018年11月~19年1月期(第1四半期)連結決算の内容だった。積極出店(国内5、海外3)を背景に売上高は前年同期比2.0%増の335億円だったが、営業利益は30.7%減の12億円、純利益は29.0%減の9億円と大幅減益だった。人件費の増加に加え、海外新規出店(台湾2、米国1)に伴う先行投資がかさんだことも影響した。
決算と同じ5日に発表した2月の既存店売上高も投資家心理を不安にさせた。第1四半期にあたる11月、12月、1月はそれぞれ前年同月比1.7%減、0.2%減、6.1%減と3カ月とも前年割れで、それに続く2月は6.2%減と今決算期で最も落ち込み幅が大きかったのだ。また、既存店客数も11月、12月は1.6%減、0.9%減にとどまっていたが、1月の7.0%減に続き2月は6.1%減と大幅な減少となった。
決算と2月売上高を受けて6日の株価は一時前日終値比10.0%(580円)安の5240円まで下げ、終値も前日比9.3%(540円)安の5280円だった。当日高値が前日安値を330円も下回り、大きく「窓を開ける」きつい下げを記録した。
スシローなど他社との競争はさらに激化
決算について市場関係者はネガティブに受け止めており、野村証券が決算を受けて6日に出したリポートは、「第1四半期の決算内容は予想以上に厳しい」として目標株価を7900円から6700円に引き下げた(投資判断は3段階の最上位Buy<買い>を継続)。野村は減益の要因について「国内での既存的売上高の苦戦、人件費上昇や広告宣伝費の増加などの複合要因」と分析し、3月1日より新商品の「くらバーガー」を投入し話題性あるサイドメニューで巻き返しを図ることに期待。海外については「先行投資の要素が強い」と見込んだ。
くら寿司は店内でロボットが握った寿司がレーンで運ばれ、客が客席の皿投入口に入れた食べ終わった皿は機械が洗浄して厨房に戻る。予約もコンピューターシステムを駆使、という具合に機械化・省人化が徹底されている。機械化によるコストダウンで1皿100円を維持する一方で素材を生かした味を追求し、うどんや茶碗蒸しに使うだしは1日数回、各店舗で昆布やカツオからとるという手間もかけている。
そうした「安い、うまい」が顧客から支持されてきたわけだが、回転寿司チェーン首位の「スシロー」など同業他社との競争が激しさを増していることもあり、足元の既存店売上高が振るわないようだ。野村以外でもみずほ証券、いちよし証券が3月に入って相次いで目標株価を引き下げた。もとより、くらコーポの株価は2018年5月の8340円を天井に長期下落傾向にあるが、人件費や原材料費の上昇圧力はなお続いており、反転上昇のきっかけをつかみにくい。