カルロス・ゴーン元会長の逮捕を機に、一気に不協和音が噴出した日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合。いっときは「離婚」すらささやかれながら、ひとまずはパートナー関係を継続することで話がまとまった。
いったい、どんな思惑が。そこには、自動車業界の変革を見据えた、各社の打算があった。
根深い対立をひとまず「棚上げ」
日産とルノー、三菱が、3社連合の新たな意思決定の仕組み構築を明らかにしたのは、2019年3月12日。提携戦略を決める新たな会議体を設置すると発表した。合議での意思決定を打ち出し、3社を束ねてきたカルロス・ゴーン被告による「独裁体制」脱却を図る。
日産・ルノー間には資本関係のあり方を巡り根深い対立があるが、いったん棚上げして融和を優先した格好となる。
詳細の説明のため、ルノーのジャンドミニク・スナール会長、ティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)、日産の西川広人社長兼CEO、三菱自の益子修会長兼CEOは横浜市内の日産本社でそろって記者会見を行った。2018年11月にゴーン元会長が逮捕されて以降、3社首脳がそろって記者会見するのは初めてだ。結束を内外にアピールしたいとの思いが透ける。
新たな会議体は「アライアンス・オペレーティング・ボード」。ルノーの会長とCEO、日産のCEO、三菱自のCEOの4人を中心に構成し、ルノー会長が議長を務める。部品の購買や研究開発、生産など、幅広く協業戦略を練る。意思決定はボードメンバーの合意により行う。毎月、パリまたは東京・横浜で定期開催する。
連合内に二つある統括会社はゴーン被告の指示で不透明な報酬が支払われたとされる。今回、不正の温床となったといわれる2社の機能を事実上停止し、アライアンス・ボードに集約する。スナ―ル氏は「単に体制を再構築するだけでなく、発足当初の精神を取り戻す」と意欲を示した。西川氏も「アライアンスの安定に非常に大きな一歩だ」と意義を協調した。