「毒を盛られたセイキン」に見る、ミームマーケティングの拡大と可能性

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ファンの創作を宣伝として活かす

   ファンが生み出した動画やイラストを宣伝として活かす方法は、「毒を盛られたセイキン」に限らないものです。

   例えばボーカロイド・初音ミク、あるいは「歌ってみた」の盛り上がりがそうです。公式にはそんな設定はなかったにもかかわらず、ファンによって作られた動画がきっかけで、ミクはネギを持つようになりました。ユーザーに人気の作品に影響され、ユーザーがさらに新たな作品を作り出す。

VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた
VOCALOID2 初音ミクに「Ievan Polkka」を歌わせてみた

   ニコニコ動画という遊び場で、ユーザーが共通の作品をもとにイラストを描いたり「歌ってみた」を作る。こうした「遊び」が拡大して、結果として音楽産業を変えるほどになったことが、柴那典『初音ミクはなぜ世界を変えたのか?』(太田出版、2014年)に描かれています。

   新しいマーケティングの流れとしても、ファンによる発信や創作は注目されています。佐藤尚之『ファンベース』(ちくま新書、2018年)では、商品が大切にしている価値を支持している人(=ファン)をベースにした考え方が提唱されました。具体的には、「身内として扱い、共に価値を上げていく」、「コアファンと共創する」ことがファンの支持をより強くすると書かれています。

   セイキンさんは最初からユーザーと共に作ることを狙ったわけではありませんが、結果として「毒を盛られたセイキン」を通じてファンと共創をしています。その宣伝効果は既に見たとおりであり、成功事例です。

   また、「毒を盛られたセイキン」のように、ネット上でマネされ流行する動画や言い回しは(インターネット)ミームと呼ばれています。2018年に、アメリカ合衆国で史上最年少の女性下院議員に当選したアレクサンドリア・オカシオ=コルテスは、ミームを使いこなしていることがニュースとなりました。

   ミームマーケティングという言葉が、英語圏では10年以上前から既に存在しています。これは2019年の日本に通用するものです。ミームは本来、ユーザーから自然に生まれるもので、マーケターが「流行らせよう」として生まれるものではありません。上手に活用するのは難しいですが、ミームマーケティングのような流れ、ユーザーが作るミームに宣伝効果があることは、最近その重要性が認められつつあります。

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