森友学園への国有地売買をめぐる問題で、学園前理事長の籠池泰典被告夫妻が2019年3月18日、野党が開いた合同ヒアリングに出席した。籠池被告が国会を訪れるのは17年3月の証人喚問以来2年ぶりで、17年7年の逮捕以降初めて。
通常、野党ヒアリングでは国会議員の真向かいの席に財務省などの官庁担当者が座るが、野党側によると、官庁側は籠池被告の出席を理由に同席を拒否。官庁担当者の席に夫妻がポツンと座るという珍しい状態で、通常のヒアリングに時間を大幅に上回る、約1時間半にわたって持論を展開した。
諄子被告「安倍さんと麻生さんは、やはり国民をだましている」
籠池被告は、ヒアリングに先立って行われた参院予算委員会を傍聴。共産党の辰巳孝太郎議員が安倍晋三首相に対して被告への評価を尋ねたが、「論評は控えたい」とするにとどめた。籠池被告は
「安倍総理の方は、魔法瓶持ってらっしゃいますから、(飲み物を飲むときに)ちょっとこっちを向いていらっしゃる。飲まれる時に私の方をチラチラご覧になっていたのが分かった。まあ気にされてるんだろうなぁ、とは思うんですけれども...」
と「推測」した上で、答弁に臨む姿勢については
「議員の方々の質問はなかなか鋭いものがあって、そこはきちっと答えないかんのじゃないか」
などと遠回しに批判した。ヒアリングで籠池被告のすぐ後ろの席に座っていた諄子被告は、安倍氏や麻生太郎財務相が足を組むなどして質問を聞いていたことに
「態度からして、安倍さんと麻生さんは、やはり国民をだましている。国民をなめていると思った」
などと憤り、麻生事務所に抗議電話をしたことがあることも明かした。
昭恵夫人との写真は「私たちが撮ったんではないんです」
安倍昭恵首相夫人との関係性も焦点になっている国有地売買をめぐる問題では、籠池被告は新たな主張を展開した。財務省による改ざんが明らかになった15年2月4日付の決裁書類によると、14年4月28日に行われた近畿財務局と籠池氏との間での打ち合わせで、
「なお、打合せの際、『本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは「いい土地ですから、前に進めてください。」とのお言葉をいただいた。』との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)。」
という説明がある。籠池被告は、この写真について、
「これは安倍昭恵夫人が『写真撮りましょう』とおっしゃったので、安倍昭恵夫人の秘書が撮った写真なんですよ。私たちが撮ったんではないんです」
と説明。近畿財務局との打ち合わせで写真を見せたところ、財務局側は「あっ!とびっくり」し、上司に見せるためにコピーを取らせてほしいと言われて応じたところ、「そこから(事態が)急激に動き始めた」と話した。
過去の政府見解と食い違う主張も展開された。これまで政府は、国有地の賃料引き下げについて、昭恵氏付の政府職員だった谷査恵子氏が、学園側の依頼を受けて財務省に電話をしたが、財務省側は減額には応じられない旨を電話で回答した、としていた。だが、籠池被告によると、谷氏は籠池被告に対して「(財務省側は)わざわざ課長級の人が来てくれました」と説明したという。仮に籠池被告の主張が正しければ、谷氏は財務省の担当者と電話ではなく直接対面していたことになり、野党側は追及材料にしたい考えだ。
籠池被告夫妻は、開設を目指していた小学校建設にあたって国からの補助金をだまし取ったとして、詐欺などの罪に問われている。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)