4月まで2週間を切り、春からの新大学生は入学前に各種資料をもらう時期だろう。そのうちの1つ、学生生活の注意事項をまとめた冊子にある「アプリ課金」の項目が、インターネット上で「的確すぎる」と話題を呼んだ。
「課金が絶対にNGというわけではありませんが、課金額を正直に両親に言えないとすれば、それは間違いなく使いすぎです」。冊子ではこんな端的な言葉で節度ある利用を呼びかけている。なぜこうした内容を掲載したのか。発行元の担当者は取材に対し、「学生のトラブルに関する大学職員からの相談」をもとに冊子を作成していったと明かす。
「わかりやすい基準だ」
冊子の画像は2019年3月16日、今春から大学生になるというツイッターユーザーがアップ。入学資料の中に含まれていたものだという。請求書を見て恐れおののき、青ざめる学生の漫画イラストが添えられているのが目を引く。
ストレートで印象的な注意喚起は注目を集め、リツイートは2万4000件、「いいね」は4万8000件を超えた。また、
「親に言えない額ってのが的確すぎる」
「わかりやすい基準だ!」
「学生あるあるだから分かるな!」
などの声も寄せられた。「まだ親には言えるな...」「最大課金時の、金額は言えないわ 使いすぎだわ」などと自身の状況に置き換える書き込みもあり、多くの課金ユーザーの目に留まったようだ。
掲載冊子は『学生生活スタートブック(2019年度版)』。能登印刷(本社・金沢市)が運営する小学校~大学の業務支援事業「大学・百貨店」(本部・千代田区)ブランドで発行し、希望する各大学に販売する形をとっている。
消費生活が専門の2人の弁護士が総合監修
「アプリ課金」のひとコマはどのようにして生まれたのか。能登印刷の担当者は18日のJ-CASTニュースの取材に、
「冊子のいずれの内容も、消費生活が専門の2人の弁護士に総合監修していただいています。基本的な原稿は我々が書き、弁護士が赤入れ(チェック)をしますが、かなり赤字が入り返ってくることが多かったですね。言葉尻が捉えられて曲解されるようなことがないよう、文言を熟考いただきました」
と振り返る。
『学生生活スタートブック』に掲載されている内容は、各大学職員のリクエストが元になっている。能登印刷の「大学・百貨店」は、大学職員の膨らむ業務負担を支援・代行する業務を担っており、大学の学生課と接点があった。
「職員の方々と話す中で、学生のトラブルに関する相談が多くあり、『入学時ガイダンス等で啓発活動はしているが効果が出ていない』という声を複数の大学から聞きました。そこで、各大学が新入生に配布している学生生活ガイドブックを拝見しますと、ほぼ文字情報のみで学生にはなかなか読まれないかもしれないと感じる内容も少なくありませんでした」(前出の担当者)
編集プロダクション事業も手がける同社は、大学側からの相談を受け、トラブルを未然に防ぐための啓発冊子の作成に着手。いかに学生が自発的に読んでくれるかを重視した。
「数十校の大学職員の方から現状の問題点をヒアリングさせていただき、学生の意見も聞きつつ構成を練っていきました。学生が興味を持って読んでくれ、かつポイントを絞って『いけないことはいけない』と分かってもらえる内容にしようと、漫画を活用した形態に落ち着きました」
採用校は4年で4倍増
「アプリ課金」についても、学生の具体的なトラブルを職員から多く聞いたといい、「詳細は明かせませんが、アプリで莫大な請求が来たとか、他にも関連のトラブルの相談が学生からよくあるという話でした」としている。
冊子は全15項目に分かれる。アプリ課金は「スマートフォン」の項目のひとつで、ほかに「飲酒・アルコール」「SNS」「交通・通学(自転車・公共交通機関でのマナー)」などがある。
「アプリ課金以外にも相談が多いのは、授業中の音声や映像を何気なくSNSにアップしてしまうことですね。大学としてはNGですが、学生にはその認識がない場合があります」
初版の15年度版は10項目だったが、職員の要望を受けて増えていった。採用校も増加しており、15年度版の51校から、18年度版は155校、そして最新の19年度版は200校を超えるという。担当者は冊子の意義をこう話す。
「昨日まで高校生だった方々が大学入学時のタイミングでご覧いただくものです。高校生活と大学生活の違いを一番感じる時でもありますので、この段階で『いけないことはいけない』と認識しておきたい項目を用意させていただいています」
(J-CASTニュース編集部 青木正典)