自己破産者をマップ上で一覧化したサイト「破産者マップ」が、SNS上で物議を呼んでいる。
個人情報保護の観点から批判が相次ぎ、弁護士は「プライバシー権侵害として、損害賠償の対象となる可能性は十分にある」と指摘する。
230万アクセスを記録
「破産者マップ」は官報に掲載された情報をもとに、過去に破産した人物の住所をグーグルマップ上で一覧化するサイトだ。地図のピンをクリックすると、名前、住所、官報公開日などが確認できる。
インターネット版の官報は直近30日分が無料公開され、それ以前は有料で閲覧できる。規約では「(ネット版は)官報を基に国立印刷局が編集・作成したものであり、その範囲内において著作権が発生する余地があると考えられます」とある。
同サイトの運営者を名乗るツイッターアカウントによれば、マップの情報は紙版から得ている。サイト運営は複数人が関わり、1時間あたり230万アクセスを記録した日もあったという。
削除要請にも応じているが、対象者の氏名、生年月日、住所、電話番号、破産理由、破産後の生活などを伝えるほか、本人確認書類の提出も義務づける。先のアカウントの2019年3月18日の投稿では、これまで800人の削除要請に応じたと明かす。
68人が訴訟準備
サイトをめぐっては、SNS上でプライバシーの観点から批判が噴出。集団訴訟募集サイト「enjin」では、掲載されたとみられる68人(18日夕時点)が参加し、サイトの削除や損害賠償などを求めて訴訟の準備を進めている。
enjinの公式ツイッターでは、「Twitter上にて『破産者マップの削除依頼を代行する』として個人情報などの提出を求めるアカウントが確認されています。破産者マップ作成者同様、素性のわからない相手に個人情報を渡すのは危険ですので控えるようにしてください」と、"二次被害"の可能性にも触れている。
アディーレ法律事務所の秦和昌弁護士は18日、J-CASTニュースの取材に、「特定の者の知られたくない情報をみだりに検索容易な状態に置いたことは、プライバシー権侵害として、損害賠償の対象となる可能性は十分にある」と指摘する。
秦弁護士は、破産情報は貸金業にとって重要な情報のため、ネットで簡単に検索できるのは良い面もあるとしつつ、こう話す。
「このような貸金業を営む者は、特定の個人の経済状態を知りたい場合には、官報検索で破産または再生をしたか否かを知ることはでき、これを地図上で一見して見られるようにする意味は乏しい。あえて言えば、『自宅の近所に破産などをした者がいないかなあ』という興味本位に応えるという意味以外には、『破産者マップ』には、意味がないと私は考えています」
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)