人手不足が深刻化する中、小売りや外食業界で営業時間の短縮に乗り出す動きが広がっている。イオン子会社のマックスバリュ西日本(広島市)は2019年3月21日から一部店舗で実施していた24時間営業を取りやめる。和食レストランなどを展開する梅の花(福岡家久留米市)は大半の店舗で5月から月2日の定休日を設ける計画だ。
マックスバリュ西日本が24時間営業をやめるのは、中国地域の一部の店舗。これまで全182店舗のうち25店舗で終日営業をしていたが、スーパーの「マックスバリュ」は午前9時~午後10時、ディスカウントストアの「ザ・ビッグ」は午前9時~午後9時の営業時間に統一する。
関係者「好景気でさえ人を集めにくい」
梅の花は、レストランとテークアウト店の大半である計85店で定休日を導入する。一部の店舗では年末年始などに休業したことはあったが、全店的に一斉に定休日を作るのは初めての取り組みだという。
「時短」が社会問題化したきっかけは、ご存じの通り24時間営業が看板だったコンビニエンスストアだ。発火点となったセブン‐イレブン・ジャパンは、大阪府内のフランチャイズチェーン(FC)加盟店から営業時間短縮を求める声が上がったのを受け、直営店とFC加盟店の両方で24時間営業をやめる実験を始める。深夜の営業をやめることにより、売り上げや客数にどんな影響があるかを調べる予定だ。ローソンも、FC加盟店の個々の要望があれば、状況次第で短縮を認めるとの方針を明らかにした。
小売りや外食の多くの企業が次々と営業時間の短縮に動き出している最大の背景は、企業の存続にも響きつつある人手不足と人件費の高騰だ。マックスバリュ西日本も梅の花も、今回の取り組みについて「従業員の待遇をよくすることで、顧客のサービスを充実させるため」というが、働きやすい環境を作り、優秀な人材を取り込むことが大きな狙いといえる。
東京商工リサーチによれば、働き手を確保できず事業の継続が困難になったり、人件費が経営を圧迫したりするなど、人手不足による倒産は増加。2018年4月~2019年2月で既に362件に上り、年度ベースで過去最多を既に更新している。各社とも営業時間短縮など抜本的な対策を取らなければ乗り切れないほど、人手不足の現状は厳しい。
ある流通関係者は「小売りや外食業界は基本的に賃金が安く、好景気でさえ人を集めにくい。最近ではアマゾンなどインターネット通販に市場を奪われており、最も厳しい状況に陥っている業界の一つだ」と話す。今後も人手不足対策のためのさまざまな取り組みが進む可能性が強い。