日本時間2019年3月15日未明、英下院が延期動議を条件付きで可決したことで、「3月29日」とされてきた欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)の行方は、さらに不透明感を増しつつある。
スムーズな離脱が成功するのか、合意なき離脱になだれこむのか、それとも――先が見通せない状況で、英国に拠点を置く日本企業は、「決断」を迫られている。
「合意なき離脱」なら世界経済の不安要素に
自動車メーカー3社が英国での生産終了や、将来の撤退の検討などを相次いで表明したのが代表だ。現実味を帯びる「合意なき離脱」となった場合、生産の混乱から英国経済が落ち込み、世界経済の新たな不安要素になる懸念が強まっていることがその背景にある。
撤退を打ち出したのがホンダだ。2月19日、欧州で唯一の四輪車の生産拠点である英国南部スウィンドン工場での生産を2021年中に終えると発表した。同工場は1985年に設立、2018年は主力車シビックを約16万台生産したが、欧州向けが不振のため、北米に55%、日本などに10%を輸出。英国を除くEU域内向けが20%、英国内の出荷は15%に過ぎない。次期モデルの生産は北米などに移すとみられる。同工場では3500人が働いており、部品メーカーも含めた雇用や地域経済への影響は大きく、今後の労使や英国政府、地域との協議はもめそうだ。
八郷(はちごう)隆弘社長は東京都内で開いた記者会見で、電動化の加速に対応できる生産体制の確立が目的だとして、「欧州での生産は競争力の観点から難しいと判断した」と説明。英国のEU離脱は「考慮していない」と、無関係を強調した。ただ、先の見えないEU離脱問題に産業界は苛立ちを募らせており、ホンダの決断をこうした脈絡で受け止める向きが多い。