メジャーリーグ機構(MLB)は2019年3月14日(日本時間15日)、選手会との間で2020年からの新ルールについて合意したと発表した。新ルールには、エンゼルス大谷翔平投手(24)の二刀流を受けて「Two-Way Player(二刀流選手)」の定義が新たに記載。MLBルーキーイヤーでベーブ・ルイス以来100年ぶりの二刀流で全米を熱狂させた大谷が、メジャーの歴史を変えた。
新ルールでは、来季からアクティブ・ロースターの人数が25人から26人に増えることや、投手のワンポイント起用が出来なくなるなど、いくつかの変更があった。その中でも最も注目されるのは、新たに「Two-Way Player」が定義付けられることだろう。まさに「大谷ルール」ともいえる新たな定義付けとはどのようなものなのだろうか。
MLBではこれまで点差が大きく開いた試合などで、投手陣を休ませるために野手がマウンドに上がるシーンが多く見られてきた。今回の新ルールでは選手の登録を「投手」と「野手」に明確に分けることで、これを規制する形となる。野手として登録された選手の登板は、延長もしくは6点差以上の点差が開いた試合のみ可能で、これまでのような起用が出来なくなる。
「二刀流」お披露目は5月以降に?
では、投手であり野手でもある大谷のような二刀流はどうなるのか。そこで新たに定義付けられたのが「Two-Way Player」である。大谷の影響で現在、MLBには二刀流を目指す選手が見られるようになったが、本格的な二刀流は現時点で大谷のみ。したがってこの「Two-Way Player」は、大谷に限定されたもので、米メディアでも「The Shohei Rule」(翔平ルール)として大きな話題を呼んでいる。
MLB選手は来季、シーズン開始前もしくはMLB初出場時に「投手」か「野手」かを登録し、シーズン中は変更が不可能となる。「Two-Way Player」はこの範疇になく、投手としてメジャーで20イニング以上、野手として20試合以上先発出場(1試合3打席以上)をクリアすれば、「Two-Way Player」として認定され、以降の試合では投手、野手どちらのポジションでも出場が可能となる。
MLBでは先発投手の投球数が厳しく管理されており、先発の完投はほとんどなく、長くても7回、8回まで。投手の条件でいえば、順調にいけば4試合から5試合でクリアするだろう。大谷の場合、野手として出場する際には守備にはつかずにDHでの起用が濃厚で、20試合以上の先発出場で3打席以上をクリアするには、4月いっぱいまでかかる見込み。どちらにせよ、来季の二刀流は5月以降となりそうだ。
今回、新たに「Two-Way Player」が定義付けられたことで、MLBの二刀流はどのような展開になるのだろうか。J-CASTニュース編集部はMLBの元球団職員に聞いてみた。
MLB元球団職員は「チームのメリットは大きい」
「メジャーで20イニング以上を投げるのは、そう簡単ではありません。大谷クラスの投手となれば話は別ですが、今回の新ルールの定義付けはかなりレベルが高いもの。大谷の影響もあって、現在、メジャーで二刀流を目指す選手がちらほら見られ始めましたが、条件をクリアできる選手は早々出てこないでしょう。大谷だからこそクリアできるものですから」
では、「Two-Way Player」の定義付けはチームにどのようなものをもたらすのだろうか。MLBの元球団職員は次のように語った。
「まだ正式に発表されていないようですが、ロースターが26人に増えることによって投手の枠が13人以内に限定されるようです。引き分けがなく、試合数の多いメジャーでは投手不足が大きな課題となっています。二刀流と認定されれば、投手枠『13』にプラス『1」となるわけで、チームのメリットは大きい。条件は厳しいですが、今後、二刀流を選手に勧めるチームが増えるのではないかと思います」
今季、エンゼルスはケーレブ・カワート内野手(26)の二刀流育成に注力する方向で、レッズのマイケル・ロレンゼン投手(27)も二刀流を目指している。エンゼルスのブラッド・オースマス監督は今後、メジャーにおいて二刀流が増加するだろうとの見解を示しており、エンゼルスがトレンドの最先端を行くことになりそうだ。