「最低でも6%成長」の深い意味 中国・全人代を振り返る

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「雇用安定」をとりわけ重視

   中国共産党の権威の最大の拠りどころは経済を成長させ、国民の生活水準を日々高めていることにある以上、成長率が「政治目標」とみなされても無理はない。ただ、そうしたこれまでの傾向を、経済合理性が否応なく正してきているのが現状だといえる。

   一方で、今年の成長目標が「最低でも6%」とされた意味は、実は大きい。現在の中国では「GDPが1%増えると約200万人の新たな雇用が生まれる」(王一鳴副主任)とされる。成長率6%は1200万人の雇用を作り出し、6.5%なら1300万人だ。毎年1000万人を超える人々を新たに就業させて初めて「経済成長の目標を達成した」とされるのが中国の現実なのだ。

   逆に、その目標を達成できなければ民心や社会の不安定が生まれかねないという危機感が政権トップには強い。「権威」が揺らぎかねない事態は何としても防がねばならない。全人代初日の「政府活動報告」で、李克強首相が「まず雇用確保を優先して考える」と強調したのも、こうした危機感を踏まえたものといえる。

   少し前から、「大衆創業・萬衆創新」という名の新規企業設立を活性化する政策が進められているのも、雇用の受け皿を増やす狙いが大きい。その結果、いま中国では一日に1万8千社の会社が新たに生まれる状況になった。こうした新興企業の活力をどんな政策でさらに高めていくか。今年の全人代で成立した「外商投資法」などによって、アメリカをはじめとする外国企業の投資をどう増やすか。全国の中小、民間企業が抱える「資金繰りの難しさ」の悩みに、金融当局はどう応えていくか――。

   課題の所在と処方箋は全人代で示された。あとはその実行度合いを注視するだけだ。

(在北京ジャーナリスト 陳言)

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