日韓関係の「政冷経熱」ぶりが際立つなか、訪韓客が「激減」している、との見方も出てきた。
韓国側の統計によると、日本から韓国を訪れる人の数は、元徴用工をめぐる訴訟やレーダー照射事案といった懸案が浮上する前の1年前と比べると増えているのだが、いったい何が起こっているのか。
「日本側のデータ」とは...??
「激減」を大きく報じたのは、2019年3月12日に発売された「夕刊フジ」(13日付、東京本社AC統合版)。1面の「日韓経済人会議も初の延期」の見出しに続いて、そのすぐ下の目立つ部分に「訪韓客激減」の5文字。脇見出しには「毎月数万人単位で減少」の説明が入った。
記事では、その根拠を
「韓国メディアは『日韓関係が悪化しても、韓国を訪れる日本人観光客は増えている』と吹聴しているが、日本側のデータはかなり違う。日本政府観光局(JNTO)などの公表データによると、日本から韓国を訪れる観光客は昨年11月(=約30万人)以後、毎月、数万人単位で減少している。今年1月は約20万人だった」
などと説明している。JNTOは毎月、「訪日外客数」と合わせて「出国日本人数」の統計を公開している。前者は国別の統計も公開しているが、後者は全体の数字しか公開していない。JNTOに出国日本人数の内訳を問い合わせたところ、
「出国カードがなくなったため、日本側では統計を取っていない」
などとして、韓国に行った日本人の統計については、韓国観光公社(KTO)の統計を参照するように案内された。
前月比ではなく「前年同月比」で見ると...
では、韓国観光公社の統計ではどうか。この統計によると、18年10月に日本から韓国を訪れたのは29万468人。11月は29万9978人、12月は25万8521人、19年1月は20万6526人と推移しており、夕刊フジの記事の説明と一致している。ただ、情勢にともなう増減を評価するためには、「前年同月比」での比較が必要だ。17年10月に日本から韓国を訪れたのは17万9661人で、それ以降の月は21万3460人、19万3705人、16万7083人と推移している。17年についても「11月以後、毎月、数万人単位で減少」していたわけだ。月ごとの伸び率をみると、それぞれ61.7%、40.5%、33.5%、23.6%と推移している。18年全体では前年比27.6%増の294万8527人だった。
ただ、元徴用工をめぐる判決で日本企業の在韓資産の差し押さえが実行されるようなことがあれば、日本人の対韓感情がさらに悪化するのは確実。日本人観光客の韓国離れが進む可能性もある。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)