高橋洋一の霞が関ウォッチ
韓国の対日政策が硬化 日本がとれる「対抗措置」は?

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   国会は、参議院で2019年度予算案を審議中である。自然成立が確実な中、単調な審議が続く中で、面白い審議があった。

   19年3月12日の衆院財務金融委員会において、日本維新の会の丸山穂高氏が、韓国に対し具体的な対抗措置を検討しているのかと政府に質問した。これに対して、麻生太郎・副総理兼財務相は、「関税(引き上げ)に限らず、送金の停止、ビザの発給停止とか、対抗措置にはいろんな方法がある」と答え、韓国への具体的な対抗措置について初めて本格的に明言した。

  • 有効な手立ては?
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メリットとデメリットを比較考慮すべき

   韓国の文在寅政権の日本に対する最近の態度は常軌を逸している。韓国最高裁によるいわゆる「元徴用工」などの判決、レーダー照射事件、慰安婦像問題への解決放棄などである。これらは、どのような立場から見ても、韓国に非があると言えるだろう。この背後には、文政権の対日政策の変化が明確に存在している。

   文政権の対日政策の変化がなければ、日本政府としては静観だ。しかし、政策変化が明確であるので、こうした事態に対して、政府内では、様々な対応措置を検討中であるという。今回の麻生財務相の発言を含めて、これまで政府が言ってきたのは、国際司法裁判所(ICJ)への提訴、関税引き上げ、送金停止、ビザの発給停止。

   このほかにも、すぐに思いつくものとしても、日本国内の韓国企業の資産差押え、貿易保険の適用から除外、フッ化水素など韓国への輸出禁止、駐韓日本大使の帰国、国交断絶など様々なレベルの対処法がありえる。

   今回の国会審議により、当然であるが政府内でも具体的な検討がなされていることが判明した。

   国際司法裁判所への提訴は、韓国が応じないと有効でないが、その場合でも韓国の説明責任がでてくる。関税引き上げでは、立法が必要でWTOルールとの整合性が懸念されるが、対韓進出で不利益を被ったとしてWTO提訴も同時に進めることがありえる。その場合でも日本経済への悪影響も考慮するなど比較考量が必要だ。送金停止やビザの発給停止は基本的に行政事項であるのでハードルは低いが、再報復や日本に好意的な韓国人も巻き込むのでメリットとデメリットを比較考慮すべきだろう。

民間レベルでの対抗措置もある

   こうしたものは政府の対抗措置であるが、民間レベルでもいろいろとありえる。もちろん民間レベルでは、ビジネス優先であるので、政府が強要するものではないが、この方が実は韓国に対して最も効果的である。

   それは、経済界あたりからもではじめている対韓直接投資の縮小、つまり韓国からの引き揚げだ。日本企業としては、理不尽な請求をされる可能性があるので当然の対応である。日本企業でもその動きは既にある。昨年の日本からの対韓直接投資は約3割も減少した。これには日韓関係悪化も影響している。

   昨年の対韓直接投資については、日本が落ち込んだにもかかわらず、中国の急増、欧米の堅調な対韓投資により、全体としては2割程度の増加になっている。

   中国は米中貿易戦争の影響、欧州はブレグジット(イギリスのEU離脱)の混乱のために、それぞれ今年はリーマンショック級の経済危機もありえると予想されている。

   在韓外資系企業に対する調査では、今年の対韓投資縮小を検討している企業は4割もあるといわれている。韓国の投資先魅力がそもそもなくなっているのだ。

   韓国経済は外資引き揚げに対して極めて脆弱だ。こうした状況において、日本企業が韓国から引き揚げるのは、韓国からの輸入品に対する関税引き上げより、はるかに強力だろう。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわ ゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に 「さらば財務省!」(講談社)、「マスコミと官僚の小ウソが日本を滅ぼす」(産経新聞出版)、「『消費増税』は嘘ばかり」(PHP新書)など。


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