乳児用液体ミルクの製造・販売の解禁を受け、江崎グリコが2019年3月5日に「アイクレオ赤ちゃんミルク」を、明治が3月下旬に「ほほえみ らくらくミルク」を販売する。
インターネット上では歓迎の声が多数上がったが、パッケージをめぐる不満も散見される。
「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」
液体ミルクは18年8月に厚生労働省が省令を改正し、国内での製造が可能となった。厚生省の承認と、消費者庁から「特別用途食品」の許可を得ることで販売できる。
消費者庁の規定では、液体ミルクおよび粉ミルクには「乳児にとって母乳が最良である旨の記載」を義務づける。さらに、「当該製品が乳児にとって最良であるかのように誤解される文章、イラスト及び写真等の表示は望ましくない」と要請している。
実際、江崎グリコの「アイクレオ赤ちゃんミルク」は、パッケージの目立つ位置に「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」と書かれている。
この表記を見て罪悪感を覚える人は少なくないようだ。一般のツイッターユーザーが3月11日、「『母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です』って文章...要る?」などと投げかけると7000ちかくの「いいね」を集め、
「見る度に胃の辺りがギュンってなるんだよな...」
「母乳に近い栄養成分だから、これはとてもいい商品だよ!と言いたいのだろうけど、母乳が出なくなった私には辛い言葉」
と共感を呼んだ。
厚労省が0~2歳の子を持つ約1200人の母親を対象にした「2015年度乳幼児栄養調査」によれば、授乳時の悩みとして「母乳が不足ぎみ」が20.4%、「授乳が負担、大変」が20.0%、「外出の際に授乳できる場所がない」が14.3%、「母乳を飲むのをいやがる」が7.8%だった。
厚労省「育児用ミルクを使う支援も必要」
消費者庁食品表示企画課は3月13日、J-CASTニュースの取材に、表示の規定は世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)が運営する国際食品規格委員会の規格に準じていると説明する。
WHOとFAOが07年に公表したガイドラインでは、「最適な乳児の成長、発達及び健康を達成するためには、誕生後6ヶ月間は母乳のみで育てることが好ましい」としている。
一方、厚労省が改訂を進める「授乳・離乳の支援ガイド」案では、育児環境の変化や最新の科学的知見を踏まえて、
「授乳の支援に当たっては母乳だけにこだわらず、必要に応じて育児用ミルクを使う支援も必要である」
「母子の健康等の理由から育児用ミルクを選択する場合は、その決定を尊重するとともに母親の心の状態等に十分に配慮し、母親に安心感を与えるような支援が必要である」
と提言。
さらに、
「完全母乳栄養児と混合栄養児との間に肥満発症に差があるとするエビデンスはなく、育児用ミルクを少しでも与えると肥満になるといった表現で誤解を与えないように配慮する。また、6か月間の母乳栄養は、小児期のアレルギー疾患の発症に対する予防効果はない」
と乳児用ミルクをめぐる誤った情報を否定した。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)