北朝鮮の金正男(キム・ジョンナム)氏(当時45歳)が2017年2月にマレーシアで殺害された事件で、実行犯として殺人罪で逮捕・起訴されていた2被告のうち、インドネシア国籍のシティ・アイシャ被告(27)が19年3月11日に釈放され、インドネシアに帰国した。検察が同被告の起訴を取り下げたためだ。
だが、もうひとりのベトナム国籍のドアン・ティ・フォン被告(30)の身柄は引き続き拘束されたままとなっている。インドネシア政府はアイシャ被告の釈放について「外交的努力」をアピールしており、ロビー活動の差が影響した可能性もありそうだ。
インドネシアは「あらゆる2国間会談で事案について提起」
17年に始まった公判では、検察側は2人に殺意があったと主張する一方で、2人は「いたずら動画に出演していた」「騙されており、北朝鮮の工作員に操られているとは全く分からなかった」などと無罪を主張。主張は真っ向から対立してきた。
マレーシアの刑法では、殺人罪で有罪になると死刑が適用される。事件への関与が疑われた北朝鮮大使館員ら8人は出国する中で、仮に自国民に死刑判決が下されて執行されたとなれば、インドネシア・ベトナム両政府にとっても世論からの反発は必至。このことを背景に、特にインドネシア政府はマレーシア政府へのロビー活動に熱心に乗り組んだようだ。AP通信によると、インドネシア政府は「首脳会談、副大統領会談、外相間の定例会談、それ以外の閣僚級会談など、あらゆるインドネシア-マレーシアの2国間会談でアイシャ被告の事案について提起」
してきたという。