2020年東京五輪のマラソン代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権をかけた「MGCシリーズ」が2019年3月10日、びわ湖毎日マラソン(男子)と名古屋ウィメンズマラソン(女子)で終了した。同シリーズ国内主要大会を終え、男子30人、女子14人がそれぞれMGC出場権を獲得。4月末までに行われる海外レースで条件をクリアすればMGC出場権を得ることができるため、今後、若干の増員が見込まれ、MGCは9月15日に行われる。
日本陸上競技連盟は2017年4月、20年東京五輪マラソン代表の選考方法を発表。これまで不透明だった選考過程をより明確にし、公平性を出すために新たな方式を導入した。代表選考レースの本戦となるのが9月15日のMGCで、ここで男女それぞれ代表3枠中の2枠が決定する。このMGCの予選となるのが、MGCシリーズと呼ばれる国内の主要レースだ。17年8月の北海道マラソンを皮切りに、男子10レース、女子8レースが同シリーズの対象レースとなっていた。
米国のマラソン代表選考は一発勝負
対象レースでは、それぞれMGC出場の条件となる順位とタイムが設定され、これをクリアした選手のみが出場権を得ることが出来る。レースによってコースや気象条件が異なることから、設定条件にある程度の差はあるが、タイムでみると、夏場の北海道マラソンが一番遅い設定で、男子は1位で2時間15分以内、女子は1位で2時間32分以内となっている。MGCシリーズは3月10日に終了し、男女合計44人がMGC出場を決めている。
9月のMGC出場を逃した選手には、最後のチャンスとしてMGCファイナルチャレンジが用意される。2019年冬から20年春にかけて行われる男女それぞれ3レースが対象となり、19年5月に決定予定の派遣設定記録を上回り、3レースで最も速いタイムを出した選手が代表となる。また、MGCファイナルチャレンジで派遣設定記録をクリアする選手がいなかった場合、MGCの次点が繰り上がり代表となる。
これまで五輪のマラソン代表を巡っては、選考レースの多さと選考基準の曖昧さから五輪のたびに論争が起こっていた。日本陸連はこれを解消するために今回の新たな選考方式を導入したが、MGCシリーズが長期にわたることなどから一般に浸透しているとは言えないのが現状だ。米国のマラソン五輪代表選考法はいたってシンプルで、トライアルレースの上位3選手が代表となり、日本でもこのような一発選考を導入すべきだとの声が以前から上がっているが、いまだ実現していない。
マラソン人気を維持するためには...
日本の選考レースがなぜ一本化できないのか。この大きな要因となっているのがテレビ局との関係である。五輪代表の選考レースは、レースを放送するテレビ局と、その系列の新聞社が大会運営を行うケースがほとんどで、日本陸連は大会運営側からレースの公認料を受け取っている。大会運営のテレビ、新聞ともに視聴率が見込める選考レースだからこその投資で、選考の対象外となれば大会そのものの存在が危ぶまれる。
表向き選考レースの一本化を提言するメディアの中には、実際、選考レースが一本化された場合、大きな「損害」を被るメディアも存在することから実情は複雑だ。日本陸連にとって国内主要レースを生中継するテレビ局は、マラソン人気を維持するためには不可欠で、テレビ局にとっても高視聴率が期待できるマラソンは、ビッグコンテンツのひとつ。日本陸連と主要レースを放送するテレビ局との関係性は深く、これが選考レースを一本化できない大きな要因だろう。
今回の日本陸連の新たな選考方法について関係者の間で一定の評価がある一方で、選考レースの一本化を推す声もいまだ多くある。9月のMGCで代表に内定するのは男女それぞれ2人だけ。残り1枠は、MGCファイナルチャレンジの結果次第となり、来春には3人の五輪代表が決定する。