現役がやるイベント? 「那須川天心に勝ったら1000万円」に賛否

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   キックボクシングの「神童」那須川天心(20)=TARGET/Cygames=が、AbemaTVの3周年特別企画として「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」に出場することが2019年3月10日、決まった。AbemaTVが発表したもので、同企画はボクシングの元世界3階級王者・亀田興毅氏、大毅氏、大相撲の元横綱朝青龍氏に続く第4弾。同企画の出場者として初の現役選手となるが、格闘技ファンや関係者から賛否の声が上がっており、現役選手の企画番組出演に波紋が広がっている。

   各スポーツ紙の報道によると、今回はボクシングの特別ルールで行うことが決定しているのみで、日時や場所などは未定という。対戦応募者はすでに10日から18歳以上の男子に限っての一般公募が始まっている。AbemaTVによる同企画は今回が4度目となるが、過去のものと明らかに異なるのが現役選手の出場。しかもキックボクシングの「神童」と称される那須川が出場するとあって、格闘技関係者に与えた衝撃は大きい。

  • AbemaTV3周年記念特番「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」
    AbemaTV3周年記念特番「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」
  • AbemaTV3周年記念特番「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」

亀田興毅は2983人の中から異色の経歴の持ち主が

   AbemaTV1周年記念企画として制作された特別番組「亀田興毅に勝ったら1000万!」は、2017年5月7日に都内の会場で行われた。今回同様に挑戦者を公募した結果、応募者が殺到し、2983人の中から予選スパーリングなどの選考を経て、4人の挑戦者が選ばれた。挑戦者は、ホスト、ユーチューバー、高校教師、元暴走族総長と異色の経歴が名を連ね、判定なしのKO、TKO決着のみの特別ルールで行われた。

   亀田氏の場合、4人のうち第2試合のユーチューバーのジョーさんがボクシングのアマチュア経験を持っていたが、他の3人はボクシング経験のない素人。ただ、同企画はすでに現役を引退していた亀田氏との対戦という、エンタメ的要素が強く、3分3ラウンドのボクシングルールが適用されたものの、グローブは練習用の大きい14オンスを使用し、フェイスガード付きのヘッドギア着用で行われた。また、企画の趣旨にそぐわないとして、選考段階で現役格闘家、元プロボクサーは除外されている。

   現役を引退してから約1年半、リングから遠ざかっていた亀田氏と異なり那須川は現役バリバリの格闘家。昨年末にはエキシビションマッチとはいえ、ボクシング界のレジェンド、フロイド・メイウェザーJr(42)とグローブを交えている。今回の対戦相手の選考基準については明かされていないが、ボクシング及び格闘競技の経験を持たない素人相手では「試合」が成立しないことは明らかだ。

ボクシング関係者からの警鐘

   日本のボクシング界は、異種格闘技戦を禁止しているため、日本のジムに所属する現役ボクサーの出場は現実的ではない。現役ボクサーが出場するとすれば必然と海外のボクサーとなり、現役にこだわらなければ、元世界や日本、東洋王者の肩書を持つ元ボクサーが想定される。ボクシング以外の格闘家ならば対戦に障害はなく、現役の格闘家の挑戦もありうるだろう。

   今回の「那須川天心にボクシングで勝ったら1000万円」の企画に関してファンの間でかわされている議論の焦点となっているのが、那須川がこのリングに立つ「意義」だ。上記のように現役の日本人プロボクサーとの対戦はほぼ不可能で、格闘家の挑戦を受けるにしても「なぜボクシング?」の疑問符が付く。ネットでは那須川の決断に「茶番はやめたら?」、「現役がやるイベントではない」などの厳しい意見も見られる。

   プロのライセンスを保持していないとはいえ、那須川のボクサーとしての資質は高く、ボクシング関係者の間では、実力は日本ランカー以上と評価されている。今回は特別ボクシングルールが適用されるというが、過去のケースと照らし合わせると、ほぼボクシングルールで安全性を確保するために練習用の大きめのグローブとヘッドギアの着用が見込まれる。一方で、元プロボクサーや現役格闘家が相手ならば、用具はより試合に近いものとなるだろう。

   ボクシング関係者は今回の企画について「格闘技界を盛り上げる点でいえば面白い。ただ、現役選手の対戦相手を選ぶのはかなり難しい。素人を選べば単なるお遊びになってしまうし、現役の格闘家ならば本当の試合になってしまう。メイウェザー戦のように話題を呼ぶことは間違いないでしょうが、対戦相手によっては諸刃の剣となる。エンタメならエンタメで。真剣勝負ならそれなりに取り組まないと、那須川のイメージダウンになりかねない」と警鐘を鳴らす。

   エンタメ的要素が強くとも、過去の亀田兄弟、元朝青龍の企画では挑戦者と「ガチンコ」で対戦したことが好評を得た大きな要因とみられる。昨年末の那須川VSメイウェザー戦は当初、対戦にあたって「茶番」との批判的な声もあったが、那須川の1ラウンドKO負けで結果的に真剣勝負の厳しさを世間にさらした。今回は立場を変えて挑戦者を迎える那須川だが、「真剣勝負」を選択するならば、挑戦者の質が求められるだろう。

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