ずいぶんと長い「守り」だった。いや、経営成績をみると、「守り切れなかった」という言葉が適切かもしれない。
経営不振の大塚家具が、中国での販売拡大などを見据えた資本・業務提携により、ひとまず窮地を脱しそうだ。大塚久美子社長は2019年3月4日、日本外国特派員協会(東京)で記者会見し、「守りから攻めに打って出る体制が整った」と自信をみせた。3期連続で最終赤字を計上するなど苦しい経営状態から本当に脱却できるのか。
原因は「お家騒動」だと説明するが...
父、勝久氏と経営のあり方を巡って対立し、久美子社長が株主総会のプロキシファイト(委任状争奪戦)で勝利したのは2015年。その年の年間の売上高は前年比4.5%増の580億円、営業黒字は4.3億円(前年は4億円の営業赤字)、純利益は24%減の3.5億円と、ほめられた数字ではないが、上場企業としての体面を何とか保つ水準はクリアしたと言えるだろう。
しかし、その後の3年間はいただけなかった。売上高は2018年にかけて、463億円→410億円→373億円と激減。営業赤字は45億円→51億円→51億円と改善せず、当期純損失は45億円→72億円→32億円と、こちらも惨たんたるものだった。2018年末の従業員数は1264人と、2015年末に比べて480人減少。2015、2016年は1株当たりの配当金を80円と大盤振る舞いしていたが、2017年は40円に半減し、2018年はついに無配に。決算書に、投資家に注意を促す「継続企業の前提に関する注記(ゴーイングコンサーン)」を記載せざるを得ない事態となった。
なぜ、ここまで落ち込んだのか。久美子社長は記者会見で「住宅着工が2倍あって、インターネットがなかった時代から、人口減少、ネットがある時代にビジネスモデルを再構築する必要がある」のに、プロキシファイトなどで経営が混乱し「ビジネスモデルの再構築のスピードが著しく落ちた」と説明した。
「これからは世界の消費者に...」
だが、家具業界を取り巻く環境の変化は、ここ3~4年のことではない。実際、2015年2月に公表した中期経営計画ではすでに、ビジネスモデルの再構築が「最優先」だと明記。消費者の購買スタイルにあわせて、「単品買い需要」の呼び戻しと法人市場向けのビジネスの強化でさらなる成長を目指すと宣言していた。問題意識は持っていたのに、数字がついてこなかったのは、久美子社長自身の経営責任が大きいと言わざるを得ない。
しかし記者会見では、ここ数年で企業価値を大きく毀損したことに対する「反省の弁」はなかった。その代わり「スピードを上げて、早く会社をよくしていく責任が私にはある」と続投を表明した。
大塚家具は2018年末から2019年2月にかけて、中国で「イージーホーム」を展開する居然之家(北京市)、越境EC(電子商取引)を支援するハイラインズ(東京)と業務提携。計76億円の資本増強策もまとめた。久美子社長は「これからは世界の消費者に私たちの商品とサービスを提供していきたい」と、どこまでも前のめりだ。
勝久氏については「良い家具を提供していきたいという価値観は全く同じ」と、歩み寄る姿勢を示した。価値観が同じなら、もっと早く、協力して何か手を打てなかったのか。そうなっていれば、ここまで損失が膨らむことはなかったのかもしれない。