日比谷高校「異例の二次募集」の深層 東京受験戦争の裏側を解き明かす

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   名門・日比谷高校(都立、東京都千代田区)の一般入試で二次募集が実施されることになり、驚きの声が相次いだ話題。J-CASTニュース編集部でも取り上げた。

   都内きっての進学校が、現行制度になってから初めての事態となる二次募集。背景に、学芸大附属高校(国立、世田谷区)の影響を指摘する声がネットで上がっていたが、入試をめぐって何が起きていたのだろうか。教育関係者に話を聞いてみた。

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  • 2019年度の入試日程
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カギを握る学芸大附属の「追加合格」

   学芸大附属の一般入試の日程は、2月13日に実施。合格発表を17日にして、18~21日まで入学手続きの期間を設けた。募集要項によると、繰り上げ合格を実施する際は、「2月22日(金)午後から2月23日(土)、または、平成31年3月1日(金)午後から3月2日(土)に、入学願書に記載された保護者連絡先に本校入試委員会の担当者から直接電話で連絡します」としている。

   一方、日比谷高校を含む都立高校の入試は、学芸大附属高の入学手続き締め切り日翌日の2月22日に実施。3月1日に合格発表をし、6日に二次募集の願書を受け付けた。

   高校受験を中心にしているZ会進学教室(千代田区)の担当者は3月7日、J-CASTニュース編集部の電話取材に対し、異例の二次募集の原因は「学芸大附属高校の追加合格が多かったことだろう」と解説した。

   学芸大附属では、2017年に繰り上げ合格者を出していなかったが、定員割れが発生。16年にはいじめ問題が発覚しており、担当者は「それが影響していたんだろうと思う」としている。

   17年春から校長が変わり、翌18年度の入試では繰り上げ合格者を出すことになった。この時の合格者数は344人。「定員をちょっと超過するのではと思っていたが実は344名では充足できず、補欠もほぼ全員繰り上げ。はっきりわからないが補欠を30名くらい出している」と明かした。

入学辞退「考えていない」としたにもかかわらず...?

   「危機感を覚えたのだろう学校側」が、「今年度に関しては『合格して手続きをしたら必ず来てくださいというスタンスで説明会が行われていて、納得する生徒だけ受けてください』みたいな話を説明会でしたようです」と解説。同校公式サイトの入試情報では、「入学辞退について」と題した文書で、

「『入学手続き完了後、保護者の転勤にともなう転居等』のやむを得ない事情が生じた場合以外、他校の合格等の理由による入学辞退があることは、本校としては考えておりません」

などと記されている。

   学校側としては辞退する生徒がいないと考えたのか、今年度入試では、正規の合格者を160人しか出さなかったという。ところが学芸大附属は場所柄、神奈川の生徒が多く受けるといい、「そちらに受かった生徒が辞退して、繰り上げ合格が発生してしまったということだろう。充足しなければどんどん繰り上げ合格を次の生徒に出していかざるを得ない状況だったと思う」と話していた。

   今回の繰り上げ合格者数について聞いてみると、担当者は「正確な数は発表されていないが、Z会進学教室だけでも10名を超える繰り上げ合格の連絡が来ている」と明かした。「わからないが」と前置きしたうえで、「ネットなどで見るとほかの塾さんも前に比べて合格者数が35名くらい増えているので、100名はくだらないのでは」と推測。

   毎年、日比谷高校は抜ける生徒を見込んで合格者を男女合わせて20名ほど出しているが、ほかの都立高校に比べて合格者数は多いという。「例年通りの抜け方だと十分収まったのが、今年はそれ以上に抜けてしまったのは何か別の要因があるとすると、学芸大附属の追加合格が多かったことだろう」と分析していた。

「日比谷の入試担当者の読みが狂った」

   入試日程の変化を指摘する識者もいる。

   教育関係者などによると、これまで学芸大附属高の入学手続きの日程はほかの国立と比べて遅かったが、今年の締め切り日は都立高入試前の2019年2月21日になった。

   育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささんは6日、編集部の電話取材に、「学芸大附属に合格していたとしても公立高校の結果が出てから、入学手続きをどっちにするかっていうのを決めればよかったが、学大附属の方が定員のことで迷走を始めて、今年は公立高校入試前に手続きをしなさいよというふうに締め切りを変えた」と入試日程の変わりぶりを指摘した。

   おおたさんは「どこまで合格者数を出すのか、どれだけ抜けるかを読むテクニックは難しい」と前置きしたうえで、「いつもと同じ入試の日程であれば、学大にこれくらい抜けるからと読める。今回は学大が変な動きをしたから、日比谷の入試担当者の読みが狂った」と話していた。

   いずれにせよ、学芸大附属側の動向が、日比谷に影響を与えたとの点では共通する。

学芸大附属側の見解は?

   J-CASTニュース編集部が7日、学芸大附属高校に書面で取材を申し込んだところ、翌8日に大野弘学校長名義で次のように回答を得られた。

「入学手続きをしていただいた受験生は、転勤等のやむを得ない理由を除いて入学していだけるものと考えておりましたが、ネット上にあるように『入学金だけ出しておけば良い』というような指導が塾等でなされていたとすると残念なことです」(大野弘校長)

   入学手続きを早めた理由については、「第一志望である受験生を大切にしたい本校の方針から、入学手続きの日程を検討致しました」と回答。そのうえで「本校が第一志望であるなら、入学を辞退するとは考えておりませんし、本校が第一志望でないなら、入学手続きをしないと考えておりました」とし、「入学手続きの日程や、合格者数を検討したことと、『いじめ問題』や『定員割れ』とは、直接影響していません」と説明した。辞退者数や繰り上げ合格者数は公表していないという。

   日比谷高校の公式サイトなどによると、二次の募集人員5人に対して応募人員は171人。34.2倍となっている。

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