国会での質問で、たびたび答弁者の知識を試すことから「国会のクイズ王」の異名を持つ立憲民主党会派の小西洋之参院議員が2019年3月6日の参院予算委員会で、安倍晋三首相に改めて「出題」する場面があった。
質問は、安倍氏がたびたび口にする「法の支配」に関するもの。安倍氏は直接は質問に答えられず、このことを小西氏は「憲政史上の大事件」だと訴えている。
「安倍総理に教えて差し上げます」
小西氏の質問は、安倍氏が1月の施政方針演説で、明治天皇が日露戦争時に詠んだ短歌を引用したことを問題視する中で出た。質問は
「安倍総理、よく『法の支配』とおっしゃいますが、法の支配の対義語は何ですか?法の支配の反対の意味の言葉はなんですか?」
というもの。秘書官が助け舟を出そうとして小西氏が「総理秘書官、ダメだよー!」とヤジを飛ばす中、安倍氏は質問には直接答えず、
「まさに法の支配による、この国際秩序を維持をし、平和な海を守っていくことが、それぞれの海の繁栄につながっていく、という考え方を示しているところでございます」
などと答弁。
小西氏は
「法の支配の対義語は、憲法を習う大学の1年生が、一番最初の初日に習うことですよ」
と煽りつつ、「答え合わせ」をしてみせた。
「憲法がよって立つ基本原理すら理解せずに改憲を唱えている安倍総理に教えて差し上げます、法の支配の対義語は『人の支配』です!権力者の専断的行為によってルールを捻じ曲げて、国民の権利や自由を侵害する、そういう時代がかつて人類にあったから、近代立憲主義に基づく憲法をつくる。その近代主義の憲法が基づく理念が、法の支配の原理なんですよ」
なお、「法の支配」の辞書的意味は
「イギリスの法律家コークが、国王は神と法の下にあるべきであるとして、ジェームズ1世の王権を抑制して以来、『人の支配』に対抗して認められるようになった近代の政治原理」(広辞苑第7版)
だとされている。
小西氏はメディア露出の少なさに不満
そのうえで、小西氏は「出題意図」を明かした。
「安倍総理が対義語を答えられなかったことに国民の皆さんも驚いておられると思いますが、私、予測していたんですが、今から6年前に安倍総理は、日本国憲法で一番大切な憲法13条を1ミリも理解せず、答えることもできず、まさに国民にとって悪夢そのものの答弁をなさったんですね。なので『法の支配』の対義語を知らないのかなー、と思ったら、やっぱり知りませんでした!」
安倍氏は
「勝手にいろんな憶測をしたうえで批判をする、あるいは、かなり人格的な批判をするということは、これは、まだ若い議員であられますから、将来を思えば、そういうことは控えられた方がいいのではないか」
と反発したが、小西氏は
「愚直にやってきただけの人間だが、安倍総理に人生を説かれるほど、私は堕ちていない」
とやり返した。
小西氏は、質疑の様子をツイッターで
「憲政史上の大事件」「私の質疑の後、安倍総理は明らかに元気がなかった」
などと振り返り、メディアの露出が少なかったことに不満をもらした。
「カルロス・ゴーン氏の保釈よりも、安倍総理が『法の支配』の対義語の『人の支配』を知らなかった事実の方がはるかに日本社会への重大事件なのだが、テレビ報道は残念な限りだ」
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)