1919年に日本統治下の朝鮮半島で独立運動が起こった記念日(3・1節)から100年の節目になる2019年3月1日を機に、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が「親日」を「清算」すべきだとの発言を繰り返している。
徴用工やレーダー照射の問題で日本政府が韓国政府に対して対応を求める中、この「親日」発言については、特段問題視していない。なぜなのか。
民族主義者からアナーキストまで、すべての独立活動家に烙印を押す言葉
文氏は2月26日の閣議で
「親日を清算して、独立運動を適切に礼遇することが民族の精気を正しく立て、正義の国に進む出発点だ」
と述べたのに続いて、3月1日の記念式典での演説でも、
「親日残滓清算はあまりにも長い間先送りした宿題」
だとして、やはり「親日を清算」することの必要性を主張。その理由を、
「日本は独立軍を『匪賊』とし、独立活動家を『思想犯』として弾圧した。ここから『パルゲンイ』(編注:共産主義者に対する侮蔑語。アカ)という言葉も生まれた。思想犯とパルゲンイは、本当の共産主義者だけに適用されたわけでなかった。民族主義者からアナーキストまで、すべての独立活動家に烙印を押す言葉だった。左右の敵対、理念の烙印は日帝が民族の間を引き裂くために使った手段だった。解放後も親日の清算を阻む道具になった」
などと説明した。「親日」によって、独立運動家にレッテルが張られたことを問題視した形だ。
「戦前および戦中に日本の当局に協力した関係者を反民族主義者として批判する用語」
日本国内では、これを「反日」の一環だと受け止める向きもあるが、日本政府はそうは受け止めていない。菅義偉官房長官は2月26日の記者会見で、文氏の閣議の発言について
「韓国の独立運動の歴史の記憶や独立運動家の役割について強調する文脈の中でなされたと承知している」
として、こういった文脈の「親日」は
「戦前および戦中に日本の当局に協力した関係者を反民族主義者として批判する用語であり、日本語で言うところの『親日』とは意味が異なる」
とした。なお、日本語の「親日」の意味は「外国または外国人が日本に好意をもっていること」(広辞苑第7版)だと定義されている。
3月1日の演説についても、野上浩太郎・官房副長官は、演説では徴用工の問題や慰安婦問題に関する言及はなかったことや、「対日関係・日韓協力の重要性」に関する言及があったことから、
「日韓関係は引き続き非常に厳しい状況にあるが、政府としては 様々な問題についての我が国の一貫した立場に基づいて、引き続き韓国側に 適切な対応を求めていく」
と述べるにとどめた。
(J-CASTニュース 工藤博司)