メモリー需要の復活はいつ?
この際、東芝とメモリー事業で協業関係にあった米ウエスタンデジタル(WD)が日米韓連合への売却に反対し、東芝との間で訴訟合戦を繰り広げた。事態の紛糾を受け、当初の話では出資することになっていた政投銀とINCJ(旧産業革新機構)も出資を見送ったため、アップル、デルなど米IT4社が議決権のない優先株(4000億円規模)を保有する形で参画した(東芝とWDは2017年12月に和解)。
ただ、IPOを考えると、納入先であるアップルらが資本参加する現在の資本構成は「利益相反となりかねず、上場審査で不利」(市場関係者)とされる。少しでも高く売りたいメーカーと、少しでも安く買いたいユーザーという、相反する立場を兼ね備えることになるからだ。そこで、政投銀とINCJがIT4社に代わって出資する方向になっている――というわけだ。
現在の出資比率は東芝40.2%、HOYA9.9%、計50.1%、ペインキャピタルが49.9%(ペイン分に間接的に韓国SKハイニックスが参画)。「日本勢で過半数」というのがこのスキームの大前提で、その限りで「現状を変更する必要性はない」(関係者)。今回の資本構成見直しは、あくまで、IPOのための障害除去が目的になる。具体的には、政投銀が3000億円程度の出資を検討、INCJも今後、詰めていくことになる。ただ、政投銀などの出資を普通株にするは、優先株かは今後の調整次第という。
問題は今後の業績の見通しだ。東芝メモリ、大株主の各社は、次世代通信技術「5G」の普及が本格化してデータ流通の拡大が加速するのは確実だとして、メモリー需要も回復するとの見方で一致している。
ただ、米中摩擦の行方はなお不透明で、中国通信機器最大手「華為技術(ファーウェイ)」の5G関連機器の欧米での締め出しや孟晩舟副会長の身柄引き渡しなどの問題もあって、メモリー需要の回復がいつになるかは、なかなか読み切れないのが実態だ。その動向次第では、「メモリーの市況が悪く、高株価が見込めない中で急いで上場するより、よいタイミングを待つべきだ」(関係者)など、早期上場への慎重論が浮上する可能性もある。