来2020年夏に任期満了が迫った東京都知事選をめぐる、自民党の二階俊博幹事長の発言が波紋を広げている。小池百合子知事が立候補するなら「全面的に協力するのは当たり前」と述べ、自民党の東京都連内から反発も出るなか、発言翌日に「他に選択肢ありますか?」と、あらためて小池氏支援の考えを強調した。
小池知事は先日、就任後初となる政治資金パーティーを開き、「知事選へ向けた準備か」と注目を集めたばかり。都知事選の日程(任期は20年7月30日まで)については、東京五輪(開幕式は20年7月24日)の準備との重複を避けるため、前倒しを小池知事が模索しているとの指摘はかねてからある。19年7月には参院選も控えており、様々な思惑が交錯している。
小池氏への「恨み」指摘する自民関係者も
二階幹事長は2019年3月4日、記者会見で都知事選対応について、「小池知事が出馬するなら、全面的に協力するのは当たり前だ」「実績は見て分かるのではないか」と支持する考えを示した。
この二階発言に対し、自民内部からは、都連関係者を含め、戸惑いや反発の声がもれた。何しろ小池氏は、かつて自民党に在籍していたが、都知事選(16年)で自民党推薦の増田寛也氏らを破って初当選。都議選(17年7月)そして先の衆院選(17年10月)において、自らが率いた「都民ファーストの会」や「希望の党」が自民(系)候補と対決してきており、自民党内には強い反発が残っている。
今回、産経ニュース(3月4日、ウェブ版)は、安倍晋三首相が4日夜の与党幹部らとの会合で「『(知事選への言及が)早いな』と驚いた様子を見せた」と、出席者情報を伝えている。4日夜の報道ステーション(ウェブ版)では、自民の都連幹部の声として「小池氏には恨みがある。『発言撤回を申し入れたい』との意見もある」との反発を伝えた。翌5日には、自民党の加藤勝信総務会長が会見で、「(候補者からの推薦もない現状では、)当然、党の意思を決定する状況にはない」(産経ニュース)と、あくまで二階氏個人の考えであることを強調した。
また、自民党都連の高島直樹幹事長は、NHKの取材に対し(5日昼放送)、「二階幹事長は都議会自民党を含めて東京都連に対し、『早く知事候補を決めろよ、待ってる』とエールを送ってくれたんだろう、という認識をもっている」と述べた。間接的に、ではあるが、小池知事支持ではなく、候補選定に向けて動く考えを示したものだ。
発言翌日にも「他に選択肢ありますか?」
このように「発言撤回論」も自民内でささやかれる中、二階幹事長は発言翌日の5日にも会見で、「他に選択肢ありますか?」「今の知事に勝てる候補者を出しますか?」「自民党が候補者を立てて、党を挙げて大騒ぎしても勝てますか?」と、あらためて小池知事が立候補した場合に支持する考えを示した。
小池知事当人は当然、二階発言を歓迎している。報道陣に対して5日、前日の二階発言について「ありがたく思っている」と語った。再選に向けての態度は明らかにしていない。小池氏は4日午後にも二階氏と会談しており、これまでも各種選挙で自民系候補の応援に出向いて二階幹事長に協力する姿勢を示すなど、自民党との関係改善に向けて「二階詣で」と評されるほど積極的に接触を図っている。2月19日には、就任後初となる政治資金パーティーを都内で開き、次期知事選への布石ではないか、との見方が広がっていた。
また、知事選の日程前倒しについては、小池氏が当選した2016年7月の選挙戦の頃から話題となっていた。次期知事選が任期満了に伴う場合、20年夏の東京五輪の準備と重なるのが必然だからで、小池氏は当選前から「任期を3年半とすることによって混乱を避ける方法もある」などと語っていた。19年2月に入っても、たとえば日刊スポーツ記事(ウェブ版、15日)で「小池氏は大会準備と選挙戦の重複を避けるため、選挙日程の前倒しを含めた特例的な調整を模索しているとの見方もある」といった指摘が出ている。
ただ、単純に小池知事が辞職して知事選を前倒ししても、再選すれば元の任期が適用されるため状況は変わらない。前倒しの実現には、再選後に新任期を適用できるような特例法を国会で成立させる必要があり、そのハードルは高い。
二階幹事長の小池支持発言が今のタイミングで出たことと、知事選前倒し論との関係ははっきりしない。知事選への自民党(系)候補としては、鈴木大地スポーツ庁長官や橋本聖子参院議員会長、丸川珠代・元五輪相らの名前が取り沙汰されているほか、党総裁も務めた谷垣禎一・前幹事長(73)への待望論も複数のメディアに登場している。谷垣氏は、2016年に自転車事故で大けがをして政界を引退し、19年2月の自民党大会に車いすで登場してスピーチを行い注目を集めた。