2回目の米朝首脳会談のためにベトナム・ハノイを訪問していた朝鮮労働党の金正恩委員長が2019年3月5日未明、特別列車で平壌駅に到着した。このことを北朝鮮の国営メディアが写真付きで伝えたのは同日朝で、異例の速報体制だ。
肝心の米朝首脳会談では具体的な合意に至ることができなかった両首脳だが、国営メディアとしては正恩氏が成果を上げられなかったと報じるわけにもいかず、首脳会談とベトナム訪問が「成功裏に」終わったと報じた。ただ、国営メディアが帰国のニュースで強調したのは「ベトナムへの公式親善訪問」。古くからの友好国でもあるベトナムとの友好関係を前面に出すことで、米朝会談を扱う比率を下げた可能性もある。
1回目の会談よりも速報性が増す
18年6月に行われた1回目の米朝首脳会談の際は、正恩氏は6月11日22時頃(日本時間)から約2時間にわたってシンガポール市内を視察。国営メディアはその様子を翌12日朝に写真つきで報じた。今回の首脳会談で正恩氏の特別列車が平壌駅に到着したのは午前3時。1回目の首脳会談よりも速報性が増していることが分かる。
ただ、今回の記事は、あくまで正恩氏が「ベトナムに対する公式親善訪問を成功裏に終えて」帰国したことを伝えるもので、朝鮮労働党、軍、政府の幹部以外にも「駐朝ベトナム大使館員」が駅で正恩氏を出迎えたことに触れるなど、ベトナムとの関係を強調。米朝首脳会談に触れたのは、正恩氏の枕詞として
「世界の大きな関心と注目が集中する中、第2次朝米首脳会談とベトナム社会主義共和国の訪問を成功裏に終えて帰ってきた敬愛する最高指導者同志(編注:正恩氏のこと)」
と出てきた部分のみ。首脳会談は「成功裏」に終わったとしたが、成果の具体的な内容はもちろん、会談で合意に至らなかったことに関することにも言及はなかった。