支付宝(アリペイ、Alipay)や微信支付(ウィーチャットペイ、WeChat Pay)といったQRコードによる決済が普及している中国で、外国人旅行者がその恩恵から遠ざかる可能性が出てきた。
QRコードで決済するアプリは、事前に一定の金額をチャージして使うことが多いが、そのためには中国の銀行口座が必要だ。これは日本人を含め海外からの旅行者にとっては至難の業だが、それでもWeChat Payについては、いくつかの「抜け道」を使ってチャージする人も多かった。だが、2019年2月末からは、こういった方法でもチャージができなくなったとの声が相次いでいる。WeChat Payは頻繁に仕様や規則が変わるため、この状態が一時的なものなのか、今後ずっと続くかは 見通せない状態だ。
チャージ成功から2日後に改めて申し込むと...
WeChat Payは、日本でも利用が一般化してきた「LINE Pay」と同様、店舗のQRコードをスキャンしたり、スマホのQRコードを店員に見せたりして決済する。アプリをインストールする際にクレジットカードを登録するが、このクレジットカードからチャージすることはできない。チャージには、大きく(1)中国国内の銀行口座から送金する(2)すでにWeChat Payのアカウントを持っている人に現金を渡し、自分宛に送金してもらう(3)代行業者に依頼する、の3つの方法があるが、(1)と(2)は一般的な旅行者にはハードルが高く、(3)が現実的だとみられる。だが、この(3)にも異変が起きている。
(3)のひとつが、「VPAYFAST」と呼ばれるウェブサイト。記者がクレジットカードや身分証明書を登録したところ、2月21日にクレジットカードからチャージに成功した。ところが、
2月23日に改めてチャージを申し込んだところ、運営会社からチャットで「WeChatの新たな規則で、お金を受け取る前に中国本土の銀行カードと紐づけて認証しなければならなくなった」
と連絡があった。中国の銀行カードを持っていないことを伝えると、
「Alipayに送金してもよろしいでしょうか」
と提案され、Alipayにチャージされた。ただ、2月末の中国滞在中、チャージされたAlipayで決済しようとすると、中国の銀行口座を入力するように求めるエラー画面が出た。結局Alipayで決済することはできず、チャージした金額は宙に浮いた状態だ。
ポケットチェンジ「口座開設等から自己責任でお願いしておりますが」...
もうひとつの手段が、「ポケットチェンジ」と呼ばれる、主に日本国内の空港に置いてある緑色の端末だ。端末の運営会社の説明では、
「海外旅行の際に余った外国硬貨・紙幣を自国で便利に使える電子マネーなどに交換できる」
ことを売りにしているが、日本円の現金を投入して人民元に両替し、WeChat Payのチャージに利用する人は多い。現金を投入するとQRコードつきのレシートが発行され、それをスマホで読み込む仕組みだ。記者もそのひとりで、2月27日に成田空港でチャージに成功している。ただ、2月28日頃から、SNS上では、現金を投入したにもかかわらず、銀行口座の登録を求められてチャージができなかったと訴える声が相次いだ。
これを受けて、ポケットチェンジの運営会社は3月1日、ツイッターの公式アカウントで
「WeChat Payで支払いが出来ないというお問い合わせが増えています。WeChat Payは予告なく頻繁に仕様が変わるので、口座開設等から自己責任でお願いしておりますが未受け取りの場合Amazonギフト券等で返金いたします」
などと注意喚起している。
(J-CASTニュース編集部 工藤博司)