衝撃与えた「一斉退職事件」
これで問題が起きないわけがないということか。関係者に衝撃を与えたのが、東京都世田谷区での「保育士一斉退職事件」だ。2018年10月末、2カ所の企業主導型保育所で起きた。関係者によると、この2園を経営する会社は、職員への給与未払いや家賃滞納があったという。うち1カ所は休園(1カ月後に再開)、もう1カ所は別の会社が引き継いで続けているが、騒動の過程で別の保育所を探さなければならなかった親もおり、深い傷跡を残した。 内閣府によると、制度が始まってから取り消しになったのは2施設だけで、休止も3~4施設程度という。ただ、届けを出さずに休園している施設もあるとみられる。2018年3月末時点で運営していた企業主導型1420施設の充足率は約6割にとどまっているという。地域的に偏り、特に自治体との連携が取れていないため、需要とマッチしていないとみられている。
こうした問題発生に、政府は質の確保や事業の継続性、指導・監査のあり方などを検証する有識者会議「企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会」を11月に設置、利用実態調査にも乗り出した。12月17日に開かれた検討委の第1回会合で宮腰光寛少子化担当相は、「量の整備に重点が置かれすぎ、質の確保への意識が必ずしも十分でなかったのではないか。質の確保が何よりも大事で、検討結果を踏まえて内閣府で改善を図りたい」と述べた。