首都圏中心のスーパーマーケット「クイーンズ伊勢丹」が、福島県産の食料品を応援している。
2011年3月11日の東日本大震災と、直後の福島第一原子力発電所の事故から、まもなく8年。その影響で大打撃を受けた福島県の畜産業や農業は、年月をかけて少しずつ元の姿を取り戻しつつあるが、その半面、いまだ風評被害が残るのもまた事実だ。
クイーンズ伊勢丹といえば、「高品質」で「逸品」といわれる食材をそろえる食品スーパー。来店するお客も舌の肥えたグルメが少なくない。選りすぐりの福島牛と福島米に関して、生産者の思いを、自ら福島に足を運んだ目利きのバイヤーに語ってもらった。
福島牛の安全性、「消費者に届けて」と丁寧に説明
食べていただければ、味のよさはすぐにわかると思います。まずは試食していただいて、味を知っていただくのが第一歩かなと思っています
クイーンズ伊勢丹で畜産担当バイヤーを務める伊達洋輔さんは、福島県産牛肉の味に自信をみせた。
「味のよさはすぐにわかります」と、福島牛について語る伊達洋輔さん
2019年2月21日~24日、クイーンズ伊勢丹では「福島フェア」を開催。東京、神奈川、埼玉、千葉の14店舗で、福島県を代表する食料品である牛肉やコメなどが店頭に並んだ。今回のフェアで、福島県産の牛肉は「7頭分が販売された」と、伊達さんはいう。
「福島県産について、消費者が抱いている誤解を解きたい」と、伊達さんは語る。福島県では、出荷する牛の全頭検査を現在も続けている。安全性が確認された牛肉のみが流通しているのだが、それでも消費者の中には心配する人も、まだいるという。
伊達さんは、福島県を訪れて、畜産家などから直接話を聞き、放射性セシウムの検査体制などを見学してきた。畜産家からは、牛の肥育方法について丹念に説明してもらった。その会話の中で、たとえば干し草をはじめとする牛のエサは震災後、屋根付きの場所で保管するなどの工夫が施されていることがわかった。
畜産家らの「安全・安心」のための努力は止むことがない。そのことを、伊達さんは消費者に販売する、クイーンズ伊勢丹の各店舗の責任者にしっかりと丁寧に説明した。
福島フェアを前に行った各店舗の責任者を集めた会議では、「やはり、お客様から安全性について聞かれることがあるとの声がありました。そこで、生産者の『安全・安心』のための努力が続けられていることを説明して理解を求めるとともに、実際に『福島』という産地名を出したうえで、『自信を持って販売してください』『お客様に産地を聞かれたらちゃんと答えてください』と伝えました」と、伊達さん。
最近は生産者の方が減少傾向にあるので、産地を保護しながら販売していかないと、どんなにおいしい牛肉も口に入らなくなってしまいます。福島牛も廃れてしまってはいけないと思うんですよ
「発見!ふくしま」福島牛を展開するクイーンズ伊勢丹の店内
2月21日、福島フェア初日に笹塚店を訪ねた。「福島の美味しい牛肉いかがですか。4日間の限定フェアです」と、威勢のよいかけ声が響いていた。
福島牛のひれステーキ肉を買った60代の女性は、「お肉が好きで、私は見る目はあると思うの。もともと福島牛は肉質がいいのを知っているし、しっとりやわらかそうで、サシもほどよく値段も手頃だから選んだのよ」と、笑った。