岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち
米朝首脳会談「決裂」が評価される理由

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支持者で広がる「強い大統領」

   オハイオ州に住む60代のニールは、こうした反応に驚きを隠さない。

「トランプ氏が評価されて、心から嬉しいよ。民主党支持者はいつも、彼が何をしても批判するだけだったからね。トランプ氏が国内で支持を失うのを恐れて譲歩すると、正恩氏は甘く見ていたのだと思う」

   トランプ氏は大統領再選を狙っている。それまでまだ時間がある。しかも今、北朝鮮が米本土を攻撃することはないだろう。2020年の大統領選の前に、劇的な合意を取り付け、再選につなげたいと考えているのでは、との声もある。合意が取れなければ、 高い支持率を狙って戦争に踏み切るかもしれないという懸念もある。

   CNNなどの民主党寄りのマスコミや支持者は、トランプ氏が独裁者である正恩氏を「称賛」し、正恩氏を「信頼している」などと語ったことに対し、「米大統領としてあるまじきこと」と厳しく批判している。

   これに対し、前述のクレッグは、「予測不能だから、正恩氏はトランプ氏が怖い。アメとムチがトランプ氏のやり方だ。しかも、交渉相手を「信頼していない」などと言えるわけがないではないか。すべて言葉どおりに解釈できるものではない。トランプ氏はこれまで歴代のどの大統領もやれなかったことを、やろうとしているんだ」と反論する。

   「トランプ氏は妥協せず、毅然とした態度を取った」、「決裂後も大人の対応で、紳士的に振る舞った」――。

   支持者の間では、強い大統領のイメージが強まったようだ。

(随時掲載)

++ 岡田光世プロフィール
おかだ・みつよ 作家・エッセイスト
東京都出身。青山学院大卒、ニューヨーク大学大学院修士号取得。日本の大手新聞社のアメリカ現地紙記者を経て、日本と米国を行き来しながら、米国市民の日常と哀歓を描いている。米中西部で暮らした経験もある。文春文庫のエッセイ「ニューヨークの魔法」シリーズは2007年の第1弾から累計37万部を超え、2017年12月5日にシリーズ第8弾となる「ニューヨークの魔法のかかり方」が刊行された。著書はほかに「アメリカの家族」「ニューヨーク日本人教育事情」(ともに岩波新書)などがある。

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