都民ファーストの会「もろさ」見えた築地問題 今の小池氏で難局乗り切れる?

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   旧築地市場の再開発をめぐり、東京都議会が揺れている。背景には、小池百合子都知事と自民の遺恨、そして知事を支える都民ファーストの会の動揺があるようだ。

   2019年1月に国際会議や展示会などが開ける「MICE(マイス)」施設を核に整備する再開発の素案を公表したが、これは従来からの方針の転換だと自民など野党が追及しているのだ。小池知事は「基本方針の方向性は変わっていない」と突っぱねるが、3月4日の都議会委員会の質疑に注目が集まっている。

公明党を激怒させた都民ファの「変心」

「跡地は食のテーマパーク機能を有する新たな市場にする」「事業者が築地に復帰する際のお手伝いはさせてもらう」

   築地再開発問題は、2年前の2017年6月、都議選を目前に、市場の豊洲移転にからんで小池知事が「築地は守る、豊洲をいかす」と「タンカ」を切って、築地跡地などに市場機能を残し「食のテーマパーク」を整備するとの基本方針を表明したのが発端。「事業者が築地に復帰する際のお手伝いはさせてもらう」とも述べ、豊洲への市場移転の賛成・反対両派いずれにも配慮した。築地跡地の保有についても、市場業者の使用料収入などで賄う「中央卸売市場会計」が引き続き担い、「税金を新たに投入することはない」とも明言した。直後の都議選は知事が率いる都民ファーストの会が大勝し、自民から都議会第1党の座を奪った。

   ところが、2019年1月に公表した再開発素案に「食のテーマパーク」がないほか、跡地保有についても従来方針も改め、約5600億円で一般会計が買い取るとした。

   これに対し自民、共産など野党が「説明なく方針を転換した」と批判し、都議会での詳しい説明、質疑を求め、定例会開会日の2月20日は大混乱に。各会派の協議が難航して小池知事の施政方針演説が予定より11時間遅れて21日未明にずれ込む異例の事態になったのだ。

   都議会での経緯は次のようなものだ。自民、共産が、経済・港湾委員会に知事を招致して一問一答形式で再開発素案の質疑を行うよう議長に求めた。開会前日の19日のことだ。これを不要とする都民ファーストと公明の与党陣営は、野党の合意を得ずに知事を招致しないことを決めた。野党が反発して協議は20日も続き、開会が遅れる中、都民ファーストが最終的に折れ、都民ファースト出身の尾崎大介議長の裁定で委員会審議を決定し、なんとか本会議開会、施政方針演説に漕ぎ着けた。ただ、今度は、はしごを外された形の公明が「信義則を破った」と、都民ファーストに強く反発――というものだ。

方針転換の裏には「若手の動揺」

   都民ファーストの方針転換の裏には、「都民の反発を恐れる若手が強硬突破に難色を示した」(議会関係者)ことがあったと言われる。選挙基盤が弱い若手が動揺したということだ。

   再開発素案は26日の代表質問でも早速取り上げられた。自民の吉原修幹事長らは「何の説明もせずにこのような方針(素案)を発表することで、やすやすと都民、事業者への約束をほごにした」と追及。小池知事は「豊洲との近接性を考えれば、築地再開発において都が改めて卸売市場を整備することはない」としつつ、「(築地に)『食文化』は重要な要素。素案でも歴史的、文化的なストックを生かすことを検討している」と説明。「基本方針の方向性は変わっていない」と強調した。

   5600億円で一般会計に移すことについても自民や共産が知事の見解をただしたが、「一般会計への移し替えにいち早く着手することで、民間事業者の参画意欲を早期かつ最大限引き出すことができる」などと答弁し、「方針転換」との指摘を突っぱねた。

   代表質問は、いわば双方が言いっ放しの場だが、委員会質疑は国会の予算委員会のように、細かい点も含めて野党が厳しく追及してくるのは確実で、小池知事が野党の攻勢をかわせるかが焦点になる。

小池氏の「頭が痛い」ポイントは...?

   こうした争いの背景には2020年の東京五輪直前に実施される次期都知事選をにらんだ各党・会派の思惑がある。小池知事と都議会自民は知事選での小池氏による「ブラックボックス」攻撃、都議選での都民ファーストの躍進と自民の激減により、自民には恨みのマグマがたまっている。小池知事は都議会自民との関係修復も模索するが、容易ではない。 一方、都民ファーストは過半数に届かないうえ、新人議員が多く、議会での力を数の分ほどは発揮できていないし、小池知事と袂を分かつ離党者も出た。2017年秋の総選挙では小池氏が希望の党を立ち上げて躍進かと思われたが、一部民主党(当時)議員への「排除発言」などを経て失速した。希望と縁を切った小池知事の政治的影響力も一気に減退した。

   都民ファーストだけで議会運営はままならないので、頼みは公明だが、今回の議会運営のごたごたで、都民ファーストに公明が怒り心頭なのは、小池知事には頭の痛いところだろう。

   今春の統一地方選、夏の参院選などでの各党派の消長も絡んで、駆け引きが続く。築地問題は、その前哨戦というところだろう。

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