ピッチャーの職業病「肩の故障」とは何なのか 元選手の体験から見るその「症状」

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   プロ野球の春季キャンプで大きな話題を呼んだのが、中日・松坂大輔投手(38)の右肩故障問題だ。球団によると、松坂がキャンプ中にファンと接触した際に、ファンに右腕を引っ張られ右肩に違和感を覚えキャンプを離脱。その後の検診では「右肩の炎症」と診断され、復帰のメドが立っていない。

   松坂の右肩負傷を報じた各スポーツ紙には「右肩故障」の見出しが躍った。プロ野球の投手が右肩を負傷した際によく見られるものだが、ひとえに「右肩故障」といっても一般の人にとって、これがどのような状態を指すのか分かりづらいかもしれない。J-CASTニュースは、肩を痛めて野手に転向した元プロ野球選手の体験をもとに野球選手の肩の故障に迫ってみた。

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多くは「インナーマッスル」の炎症

   野球の投手が肩を故障したとされる多くのケースが、肩の内側筋肉の炎症である。過度の投げ込みや連投、投球フォームの乱れなどからインナーマッスルが炎症を起こすことで肩に痛みが走り、併せて関節などに違和感を覚える。重症となれば、腕が肩よりも高く上がらず、短い距離の投球でさえ困難となり、最悪、投手生命を奪いかねないものとなる。

   今回の松坂のケースも同様で、ファンに右腕を引っ張られた際に右肩が炎症を起こしたとみられる。松坂はソフトバンク時代の2017年に右肩の肉離れによる右肩痛で投球出来ない状態が続いていた。2017年オフに右肩を治療し、投球可能な状態まで回復したが、ファンとの接触で右肩に思わぬ衝撃を受けたことで、インナーマッスルが炎症し、右肩痛が再発したとみられる。

   鹿児島実業高のエースとして1996年の第68回選抜高等学校野球大会で優勝し、横浜ベイスターズ(現DeNA)で活躍した下窪陽介氏(40)は、右肩の故障で大学3年時に野手に転向した経験を持つ。下窪氏のケースは、96年の夏の甲子園大会出場を決めた県予選で右肩を剥離骨折し、大学進学後は右肩の炎症に悩まされたという。

甲子園決勝で「大味」な試合が多い理由も...

   右肩の故障で野手転向を余儀なくされたが、肩を休めることで右肩痛は和らぎ、日常生活には支障なかったという。ただ、投手として右肩の炎症は致命的で、右肩痛をおして臨んだ96年選抜大会決勝戦の当時の状態を次のように語った。

「私の場合、肩に加えて肘の状態も良くなかったのですが、その場合、どうしても痛みや肩の重さのためリリースが早くなってしまいます。ピッチャーにとってリリースは1ミリの感覚の世界です。1ミリでもリリースが早くなれば、その分、バッターは球筋の見極めが早くでき、バッター有利になるのです」

   下窪氏によると、甲子園の決勝で打ち合いになる「大味」な試合が見られるのは、連投する投手の肩の疲労が蓄積され、リリースポイントが早まることで打者有利な展開となるのではと推測する。下窪氏自身、高校時代、2点以上失った記憶はあまりなかったといい、選抜での決勝戦では「気が付いたら3点失っていた。自分でも驚いた」と振り返る。

「休養」でどこまで回復する?

   肩の炎症の治療法は多数存在するものの、最も効果的なものは「肩の休養」だといわれている。投手の負傷として肩と並行して多く見られるのが肘の故障だ。肘を負傷した場合、靭帯損傷、断裂など伴うため手術を受けるケースがほとんど。MLBエンゼルスの大谷翔平投手(24)やカブスのダルビッシュ有(32)らも肘を痛めてメスを入れている。

   肩の炎症の場合、肘の負傷と異なり、ある一定の期間を休養に充てれば回復する見込みは高く、プロ野球の投手でも復活したケースは多くみられる。下窪氏は大学時代、野手に転向したが、インナーマッスルを鍛えたことで右肩にある程度の回復がみられたという。結局は投手として復帰することはなかったものの、高校時代、最速140キロ前半だった球速は、147キロまでに上がったという。

   今回の松坂のケースは軽症でないことは確かだろう。当初、5月の復帰が見込まれていたが、6月にずれ込むとの予測も。プロ野球の投手にとって職業病ともいわれる「肩の故障」は単なる炎症ではなく、プロ野球生命を大きく左右させる脅威でもある。

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