タレントのフィフィさんが、ツイッターで立憲民主党の蓮舫参院議員が「児童虐待防止法改正に反対した」などと誤った情報を投稿し、拡散されたことが話題になった。
誤った情報を広めないようにするには、どうしたらよいのだろうか。J-CASTニュースでは、フィフィさんのツイートをリツイートした人や、メディアの専門家に話を聞き、今回の問題について改めて考えてみた。
1万7000以上リツイートされた投稿
発端は、2019年2月17日夜の投稿。千葉県野田市の女児が死亡し、両親が傷害容疑で逮捕された事件をめぐり、フィフィさんは、
「私は問いたい、なぜ平成16年の警察の積極的介入を盛り込んだ児童虐待防止法改正に反対した蓮舫氏が、今回の虐待死の件で現政権を責めることが出来るのか、私はその真意を問いたい。あなたは本当に国民の側に向いているのですか?それ以前に同じ親の立場として問いたい、なぜあの時反対したのですか?」
と発言した。
その後、蓮舫氏は、04年の初当選以来、児童虐待をなくすための活動に尽力してきたとツイッターで指摘。児童福祉法改正案では本会議質問を行い、「この法案は委員会も本会議も全会一致で賛成されました」などと説明した。なお蓮舫氏が参院選で初当選したのは04年7月11日で、改正児童虐待防止法が成立した時点(04年4月)では国会議員ではなかった。その後、フィフィさんは投稿を削除し、ツイッター上でお詫びを出した。
投稿はJ-CASTニュース編集部が確認しているだけでも、削除までに1万7000以上リツイートされた。
なぜ、ユーザーは誤った情報を拡散させてしまったのだろうか。編集部では、ツイッター上でリツイートへの反省や謝罪を表明していた数人に取材を申し込んだ。このうち、主な2人のコメントを紹介する。
「フィフィさんを信用していた」
フィフィさんのツイートをよく見ていたという30代の女性。「(フィフィさんの)ご意見に納得することが多かったです。そして、蓮舫議員始め政治家の言行不一致に常々不信感を抱いていました」と語っていた。
普段リツイートする際は、複数のサイトを見比べたり、キーワードで検索したりして情報の正確性を確かめるという。しかし今回については、「『また政治家がやってくれたか(悪い意味で)』との思いからすぐにRTしてしまいました」と振り返る。「慣れ親しんだアカウントによるツイートに、共感できる感情を見つけたことによる安心感や連帯感により大事な手順を省いてしまったのです」と自身を省みた。
大学教員の40代男性は、政治的な内容をリツイートする際は真偽に留意してきたなどと前置きしたうえで、今回のリツイート理由について、3つの理由をあげた。
「先の虐待事件について、憤慨し、『もっと警察が関与すべきだ!』という考えを持っていた」
「メディアを通じて知りうる蓮舫氏の政治的言動が支持できない」
「フィフィ氏のTwitterでの言動には一定の信用をしていた」
蓮舫氏を支持できない理由として、
「自分の言動を棚にあげ、兎に角、自民に反対、他者を口撃している様子ばかりしている様子に見えるからです(実際はかなり違う印象の人であることは伝え聞いています)」
と語り、フィフィさんを信用していた理由には「自身の経験を元にした発信(特に中東関連の情報)しているという認識をしていたため」としていた。
背景には「安心感や連帯感」が
識者は2人のリツイート理由をどう見ているか。J-CASTニュース編集部は2月26日、元TBSキャスターで白鴎大学客員教授の下村健一さん(メディアリテラシー教育)に話を聞いた。
取材に対し、下村さんはキーワードは前出の「安心感」や「連帯感」だと指摘した。以前、学生たちに「誤報に導かれて崖から落ちる危険性」を警告した際、「皆と一緒に『そうだそうだ』と言いながら崖から落ちる方が、孤立するよりはマシ」という声があったという。
そのうえで下村さんは「安心感や連帯感を事実確認より重視する人に対して、ファクトチェックは無力」と指摘。普段、慎重な人でも「『ツボ』にはまった時にはブレーキが緩む。何か初めての情報を見て気持ちよさを感じたら、意識的に注意する癖をつけたほうがいい」と語った。フィフィさんのツイートが拡散された背景については、「一緒に叩く連帯感と、多くの人に『ツボ』にはまる気持ちよさがあったことが重なり合った」と分析した。
著名人でもあるフィフィさん。下村さんは「普段から言動を見ていると、知り合いのような気持ちになるから警戒心が緩む」と語り、誰が発信者かで機械的に信憑性を判断するのは賢明ではないという。「『この人のいうことは信じる』という全肯定と、『この人のいうことは信じない』という全否定はまったく同じ態度の背中合わせ」と決めつけの危うさに警鐘を鳴らし、「一個一個の中身について、『これ初めて聞く』と思ったら一旦立ち止まろう」とアドバイスする。
「どうしても知らせたかったら...」
フィフィさんの投稿は削除されるまでに1万7000件以上広まった。一方、18日のお詫び発言は26日19時30分時点で3300件台の拡散と対照的だ。
「大半の拡散者がフィフィさんの謝罪を読んで、『違ったの』で終わりにしている。拡散したという点は同罪なのに、みんなその自覚がなくて訂正は広まらない。本当は拡散者も、フィフィさんの謝罪投稿に自分自身のお詫びの言葉を添えて、自分が知らせた人々に広める責任があるのに」
誤った情報に踊らないためにはどうしたらよいか。下村さんは「自分とは考えが合わない人とも、敢えて友人申請やフォローをしてつながっておく。『やだね』を『いいね』しよう」と呼びかける。「そうすれば何か話題が出たとき、自動的に違う情報や考え方も手元に入ってきて、(誤りに)気づくきっかけになる」。
「ノーコメントでの拡散は無条件承認と一緒。どうしても仲間に知らせたかったら、せめて一言『本当かな』と付け足して。そこから先は『本当かな』付きで拡散していくから」
(J-CASTニュース編集部 田中美知生)