3月3日のひな祭りを前に、日本人形協会が公開した「ひな人形」に関するマンガが議論を呼んでいる。
マンガでは、「母親のひな人形を娘に譲ることは母親の厄を娘に引き継がせる」として、一人に一飾りずつ持つよう助言しているが、ネット上では「流石にちょっと無理筋では...」と反発も寄せられている。協会に真意を聞くと...。
「母親の厄を娘に引き継がせることに」
約330社が加盟する日本人形協会では2019年1月、「ひな人形の正しい知識の啓発」を目的に無料マンガをインターネットで公開した。
物議を醸しているのは、「ひな人形のおさがりを飾ってはいけない」「ひな人形を娘に譲ることはその本来の役割に反してしまう」との主張だ。マンガの内容を解説したプレスリリースでは、
「ひな人形には子どもの身代わりとなって厄を受けるお守りの意味があります。したがって、母親のひな人形を娘に譲ることは母親の厄を娘に引き継がせることになってしまいます。ひな人形は、一人に一飾りずつ持つべきものなのです」
としている。
SNS上では「流石にちょっと無理筋では...」「業界が商売の為に作った嘘伝承」と懐疑的な見方が少なくなく、朝日新聞の2月27日付記事「ひな人形 業界『おさがりNG』と言うけれど」では、先の言説を否定する複数の専門家の意見を紹介している。
文献は残っていないが業界では広く知られてきた
日本人形協会の倉片順司副会長は28日、J-CASTニュースの取材に、
「ひな人形を娘に譲るのはNGというほど強くはない。飾ってはダメだと言いたいわけではなく、飾ることの意味を知ってほしかった。ストレートに伝えると(メディアに)取り上げてもらえないためちょっと強めに表現してしまった」
と話す。
倉片氏によれば、ひな人形には厄を封じこめて子どもの無病息災を祈るのに加え、将来結婚して幸せになってほしいと願う目的がある。そのため男女一対となっており、おひな様(女雛)は子供の結婚姿を、おとの様(男雛)は夫を表す。「幸せのために飾る人形を母親の厄を持ったまま純粋無垢のお子さんに与えてしまうと、厄が入ったままで、将来の旦那さんも変わってしまう」(倉片氏)
現代のひな人形の形が生まれたのは江戸時代で、文献は残っていないという。しかし、業界では常識でかつては広く知られていたものの、「現代になって核家族化が進んだため家族内で伝わらなくなってしまった」。
倉片氏は「古くから伝わる日本の文化なので、本当の意味を知ってほしい」と訴える。