高橋洋一の霞が関ウォッチ
記者は「意見開陳」より「質問」をすべき 官房長官会見に見る「マスコミのあるある」

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   2019年2月26日の官房長官記者会見が話題になっている。「東京新聞記者に菅官房長官『あなたに答える必要はない』」というのが、朝日新聞の見出し(ウェブ版)である。

   これだけを読むと、どうも菅義偉官房長官がしでかしたような悪い印象に見えるが、前後関係はほとんど書かれていない。それについて、この東京新聞記者が、自分の意見を被して質問したからだというネット記事もある。なお、このネット記事では、東京新聞の記者を名指ししていないが、望月衣塑子記者だ。

  • (画像)2月26日の菅官房長官会見が話題だ(政府インターネットTVより)
    (画像)2月26日の菅官房長官会見が話題だ(政府インターネットTVより)
  • (画像)2月26日の菅官房長官会見が話題だ(政府インターネットTVより)

事実は一次情報にあたる方が効率的

   ネット記事の通りだ。実は、筆者は、記者会見そのものをネットで見ていたので、ネット記事なしでも、新聞報道の菅官房長官が悪いとのイメージと異なり、東京新聞の望月記者に分が悪いのはわかっていた。官邸サイトの記者会見を見れば、誰でもわかるだろう。

   今や、便利な時代になったものだ。官房長官の記者会見(月から金の午前と午後。これは他国なら報道官がやればよく、日本の閣僚の中で最も過酷とも言える)がネットで見ることができるので、下手な新聞なんか読む必要はない。もっとも、筆者は役人時代から25年近く新聞を購読していない。その間、官邸で内閣参事官や大臣補佐官をやっていたが、それら業務に差し支えもなかった。

   率直にいえば、マスコミ人・ジャーナリストの書くものにそれほど価値を見いだしていない。もちろん例外もあるが、事実や分析が少なく意見ばかりをいう人が多いからだ。事実についてはマスコミ記事より一次資料やデータにあたるほうが効率的だ。分析も自分でやる方が早く正確だ。意見はマスコミに求めていない。

   筆者の役人時代の経験でも、国会などで自分の意見をあまりいわずに事実関係から質問を連発する人は、対応が困難なので気をつけた。一方、質問の前に自分の意見を長々と述べる人については、対処が楽だった。意見を演説するので時間を消費してくれるし、こちらの不用意な答えも回避できる準備ができるからだ。

同業記者にとっても「時間の浪費」

   この観点から、望月記者への対処は楽だろう。実際、官房長官の記者会見をみると、望月記者が意見を述べ出すと、官房長官は資料に目を通すことをやめて余裕の対応になる。

   記者会見の進行係の人が、意見を述べないで簡潔に質問してくれというのに、望月記者はまったく聞く耳を持たないのはかなり滑稽である。望月記者は、意見と事実の違いを認識しているのかわからないが、進行係の人の発言を質問妨害とみているようだ。

   東京新聞や望月記者は、国民の知る権利の代わりに行使しているつもりだろうが、意見をいわないで質問したらいいだろう。記者会見をみていると、質問よりも意見開陳のほうが長い。

   今のままなら、記者会見に出ている同業記者にとっても、時間の浪費でその分自分達の質問時間が削られているという不満が出てきても不思議ではない。それこそ国民の知る権利を奪うことにもなってしまい元も子もなくなる。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長 1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」(講談社)、「ド文系大国 日本の盲点」(三交社)、「『消費増税』は嘘ばかり」(PHP新書)など。


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