慰安婦問題をめぐる2015年末の日韓合意の「骨抜き」ぶりが、さらに鮮明になりそうだ。韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は19年2月25日(現地時間)にスイス・ジュネーブで行われた国連人権委員会のハイレベル会合で演説し、2年連続で慰安婦問題に言及した。19年の演説では、元慰安婦の女性に対する取り組みが不十分なままにこの世を去っていく現状について「悲しく、非常にいらだたしい」とした上、これまでの韓国政府の取り組みは「被害者中心のアプローチ」が欠けていたとの認識を示した。
日韓合意では、慰安婦問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し、「国際社会で互いに非難・批判することは控える」していた。今回の康氏の発言は日本を名指ししているわけではないが、合意の内容と矛盾すると取られかねない。
日本名指しは避けたが...
康氏の演説の内容は、主に戦時下の性被害に関するもので、その中で慰安婦に関する言及があった。18年のノーベル平和賞は、内戦状態が続くコンゴ民主共和国で性被害受けた女性の治療にあたった医師のデニ・ムクウェゲ氏と、人身売買被害者の救済を訴えるイラクの少数派ヤジディ教徒、ナディア・ムラド・バセ・タハさんに贈られている。康氏は、この知らせは元慰安婦の金福童(キム・ボクトン)さん=19年1月死去=を「非常に喜ばせただろう」と話した。金さんは日韓合意に強く反対してきたが、康氏はこの点には言及せず、「人権を断固として訴える人だった」とするにとどめた。
康氏によると、韓国政府が認定した元慰安婦のうち、生存者は23人しかいない。こういった状況について
「その全員が80歳代後半から90歳代前半だ。生涯にわたる痛みに対する完全な取り組みがないまま、(元慰安婦の女性が)私たちのもとを離れていくという事実は、悲しく、非常にいらだたしい」
と訴えた。