「神様」マイケル・ジョーダンがシューズに求めたものは
これがプロスポーツ選手となると、メーカーの「広告塔」として多額の契約金が発生するケースが多くみられる。バスケットでいえば、古くはNBAのマイケル・ジョーダン氏(56)とナイキの関係が有名なところだが、ジョーダン氏は試合ごとに新品のシューズを履いていたことでも知られる。今回のような「破壊」を危惧してのことではなく、新品のシューズは汗などの水分を吸っていないため軽量で、安全性というよりも軽さを重視していたようだ。
サッカーの英プレミアリーグのチェルシーでプレーしていたジョン・テリー氏(38)は、現役当時、ナイキと契約を結んでおり、1試合で3足のスパイクを履き替えていた。そのすべてが新品のもので、内訳は練習で1足、試合前半で1足、後半で1足。サッカー選手の多くは、天候の変化に備えてスパイクを数足用意するが、テリー氏のように1試合で3足を履きこなす選手はまれである。気になる使用後のスパイクだが、すべて慈善団体に寄付し、チャリティーのための資金となるという。
シューズに関して神経を注ぐ競技のひとつがマラソンだ。トップ選手のほとんどがスポーツ用品メーカーと契約しており、メーカーからは選手それぞれの足型に合わせた専用シューズが提供される。一日、数十キロを走破するマラソン選手にとってシューズは消耗品で、数日でシューズを履きつぶしてしまう選手もいるという。多い月には10足近くのシューズを履きつぶしてしまうという。
以前に女子マラソンのトップ選手を取材した際に聞いた話だが、その選手はレース当日にメーカーから10足近くのシューズを用意してもらっていたという。レース当日の天候もそうだが、その日の体調によって選択するシューズを決める。用意された左右すべてのシューズを試着し、その時の感覚にマッチしたものを使用する。その選手は練習で使用したシューズでレースに出場したことは一度もなかったという。
ウィリアムソンが履き古したシューズを履いていたとは考えにくいが、メーカーから支給されたシューズでも今回のような「悲劇」は起こり得る。ナイキは2月21日に「我々は言うまでもなく憂慮している。ザイオンの早期回復を願っている」との声明を発表し、騒動の鎮静化を図ったが、スター選手の不慮の事故による波紋はまだ収まりを見せていない。