岡田光世「トランプのアメリカ」で暮らす人たち ユダヤとアラブ、対立に拍車かける米政権

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イスラエルを受け入れるアラブ人

   カフェで話したふたりは、入植を強く批判した。幼稚園教諭の女性が言う。

「ビビは(ネタニヤフ首相の愛称)は超正統派ユダヤ教徒の大きな支持を得ている。ビビの考えはこうなの。国を2つに分けてアラブ人とユダヤ人が共存するのは、無理。ユダヤ人の安全が保障されない。パレスチナ人には、周辺のアラブ諸国へ出て行ってもらう」

   もう1人の女性は映画監督で、以前、ガザ地区の漁村でアラブ人とユダヤ人の漁師がともに仕事するドキュメンタリー映画を制作したという。

「でももう、過去の話。今は『イスラム原理主義組織ハマス』が勢力を持ち、ガザを支配している。アラブ人がトンネルを掘ってイスラエルに来ようとし、ユダヤ人が爆撃し、悲しい現実だわ。ガザは地中海に面した美しいところ。テルアビブのように生まれ変われるのに。右派の政治家や宗教指導者はアラブ人もユダヤ人もお互いに、自分たちだけの土地だから出ていけ、と相手に主張する。だから解決策はないのよ。彼らは和平なんて、望んでいない。アラブ人もユダヤ人も、一般市民のなかにはいい人たちがたくさんいるし、なかよく共存することを望む人たちも多いわ」

   私は、その数日前に東エルサレム(アラブ人居住区)にある外貨両替店の窓口にいた、50代のアラブ人男性が言っていたことを、ふたりに話した。

「ユダヤ人は僕らの敵だし、僕は自分をアラブ世界の人間だと思っている。でも僕は、働き者のユダヤ人を尊敬しているよ。そして東エルサレムでは、アラブ人であってもユダヤ人と同じように、医療も教育も受けられる。近隣のアラブ諸国は、賄賂などで政治も司法制度も腐敗して、民主主義はない。だから、ここに住むアラブ人のなかには、イスラエルを受け入れるようになった人も多いんだ。ヨルダンやエジプトから友達が来ると、『占領されて苦しい生活を強いられていると思ったら、僕たちよりずっといい生活をしているじゃないか』と言うんだ」

   カフェの女性ふたりは、それを聞いて驚いた。「そんなふうに考えているアラブ人がいたなんて、知らなかったわ」と。

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