テレビ番組のインタビューで「炎上したら広がる。広がったら考える人が増える」などと発言したお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」の村本大輔さん(38)について、漫画家の小林よしのり氏(65)が2019年2月23日のブログで「単なる無責任でしかない」と痛烈に批判した。
インタビューは21日の「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日系)で放送。村本さんの発言に羽鳥アナが真剣な面持ちで反論し、スタジオに緊迫感が漂ったことも含め、放送内容はインターネット上でも話題を集めた。その羽鳥アナに対して、小林氏は「『違うと思う』と言い張った根性は大したものだ」と称賛した。
「間違っていてもいいから、僕は発信し続けること」
沖縄基地や原発をはじめとした社会問題に、漫才やツイッターを通して切り込んできた村本さん。番組のインタビューでは
「基地は沖縄だけの話じゃない。日本の話。原発は(大飯原発がある)福井県の話ではなく全国の話でしょ。でも、なぜかみんな聞かない。考えないで楽に語れるものを求めているんですよ、遊びで語れるものを。自分達さえよければいいから」
と問題意識を述べ、人々が関心を持たない背景として「見ている側の『心の余裕』が徐々になくなっているような気がする」と持論を語った。
話を受け、インタビューしたテレビ朝日記者の玉川徹氏に「手っ取り早く自分が気持ちよくなれるような、ちょっと考えれば済むようなものに需要がいって、テレビはそこに乗っかっちゃってる?」と聞かれた村本さんは、
「乗っかっちゃってる。不安を解消するための道具であって、真実を伝えるための道具じゃない、テレビは」
とメディアを批判。その上で、
「だから黙るのではなくて、間違っていてもいいから、僕は発信し続けること(が重要だと思う)」
と説いた。
ツイッターなどでは時に過激な論調となり、「炎上」を起こすことも少なくない村本さんだが、玉川氏に「僕から見ると『そんなことまで書かなくていいのにな』ということをツイッターで出すのも意味があるということ?」と聞かれると、
「意味がある。炎上したら広がる。広がったら考える人が増える。それが正解・不正解...全員バカじゃないから。『村本バカだ』『村本正しい』というより、みんな明日、明後日は違う考えになっている。考えることを成熟させることですよ」
と自身の発信の意義を訴えていた。
「馬鹿馬鹿しいにも程がある」
録画でインタビューの模様を見たという小林よしのり氏はブログで、村本さんの主張に
「炎上したら議論のきっかけになるという論法は単なる無責任でしかない。人を殺して『人はなぜ人を殺してはいけないのか?』と言えば、議論にはなるだろう。議論のきっかけになるなら無責任も許されるとする者が、テレビは真実を伝える道具じゃないと主張するとは、馬鹿馬鹿しいにも程がある」
と真っ向から反論した。
自身は漫画『ゴーマニズム宣言』で風刺を交えて社会・政治問題を扱っているが、「『ゴー宣』には、編集部からの徹底したファクト・チェックが入ってくる」という。「真実を伝えたいのだから、反射神経のみで描いてるわけじゃないのだ」と慎重を期していることを明かした。
村本さんが、沖縄基地や原発について伝えても「なぜかみんな聞かない」としていたことについても、小林氏は「自分の生活に直結しない社会問題に、人々が関心を持たないのは当たり前だ。みんな、忙しいんだ」とした上で、
「テレビは人を不安にさせたり、考えさせるストレスを与えれば、視聴率は取れない。視聴率をまず取らなければ始まらない。読者のストレスを快感に変える努力を、わしは何十年間もやってきたが、テレビマンも同じ努力をすればいいだけだ」
とメディア側次第だと諭した。
「羽鳥はプロの覚悟を持っている」
番組ではインタビュー映像の後、スタジオの羽鳥アナが「僕は違うと思いますね」「広めるために炎上させるのはダメだと思いますね」と村本さんの主張に苦言を呈していた。小林氏はこの場面にも言及し、
「羽鳥慎一が村本の無責任発言に『違うと思う』と言い張った根性は大したものだ。羽鳥はプロの覚悟を持っている」
と称賛。「今のモーニングショーでは、抜群のバランス感覚だ」と評価していた。