陰謀論に囚われる日韓、これで北朝鮮問題を解決できるのか 東大教授・木宮正史さんインタビュー

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米朝首脳会談の見通しは...

――  かといって日本側も「はい、そうですか」と流されるわけにはいきません。

木宮: 実際、日本の企業の在韓資産に対する差し押さえという問題がもう目の前にあるわけですから、日韓の経済関係にも相当なダメージになると思います。

―― 先が見えない。まさに底が見えない。

木宮: これまでは、歴史問題があったとしても日韓の政府間では「しっかり安全保障、防衛交流をやっていますよ」という状態が続いてきました。しかし、レーダー照射問題以降、防衛交流も危うくなっていますし、日本企業の在韓資産の差し押さえがあれば経済関係にも少なからず影響があって当然です。そうすると色々な状況に影響が出ます。例えば日本に来る韓国人観光客は気にしないと思いますが、韓国に行こうとする日本人観光客には影響が出るでしょう。文在寅政権は、歴史問題とそれ以外を切り離す「ツートラック戦略」を打ち出していますが、おそらくそれは日本には通用しません。

―― 最後に、米朝首脳会談では、何らかの成果があると思いますか。今回は2回目で日程も2日あります。18年のように「会ったこと自体に意義がある」とはいきません。

木宮: 非核化の工程に関する合意を少しずつ詰めていく「サラミ戦術」にならざるを得ないと思います。一度に何かを大胆に期待するのは難しいでしょう。トランプ大統領は再選の問題があるにしても、金正恩氏には政権交代はあり得ないので、ある程度時間をかけてお互いの非核化と見返りを進めていくことしかありません。問題はお互いに「こんなのはもうやってらんねぇ」という風になると、お互い(核武装を強調していた)2017年の状況に戻って危険です。進まないからしびれを切らしてダメだというのではなくて、とにかくちょっとでも進んでいるうちはそれを見守り、後押しをしながらやっていくというのが賢明だと思います。

木宮正史さん プロフィール
きみや・ただし 1960年、静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院法学政治学研究科修士課程修了・博士課程単位取得退学。韓国高麗大学大学院政治外交学科博士課程修了(政治学博士)。法政大学法学部助教授、東京大学大学院総合文化研究科助教授・准教授を経て東京大学大学院総合文化研究科教授。


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