家具チェーン大手で、経営再建中の大塚家具の2018年12月期決算は、最終損益が32億円の赤字だった。前期の72億円の赤字から赤字幅は減ったものの、販売不振から脱したわけではなく、今後の事業の継続性について懸念は消えない。
決算発表のあった2019年2月15日には、日中で越境ECを手がける「ハイラインズ」と米系投資ファンドの「イーストモア」などに第三者割当増資と新株予約権の発行を実施することで最大で約76億円を調達することも発表。財務強化を図るが、一方で持ち株比率の50%超を占めることとなり、経営への影響力は無視できなくなる。
「在庫一掃セール」は一時しのぎ
大塚家具の2018年12月期決算によると、売上高は前期比9%減の373億円、経常損益は53億円の赤字(前期は51億円の赤字)、営業損益は51億円の赤字(前期は51億円の赤字)だった。
販売費や一般管理費は、賃借料を低減、抑制。営業面では、18年9月28日からの「在庫一掃セール」で、10月(前年同月比7.7%増)、11月(4.1%増)と2か月連続で増収を確保。2か月連続で売上高が上回ったのは、17年6、7月以来の16か月ぶりだった。
とはいえ、大塚家具の売り上げが持ち直したわけではない。また、資金繰り悪化の懸念が遠のいたわけでもない。家具は売れたものの、むしろブランド価値は後退。在庫一掃セールは、キャッシュ不足に陥った企業が使う、最も手っ取り早い方法なため、投資家らの目には「一時しのぎ」や「追い詰められた」ように映った。そればかりか、父・勝久氏が熱心に進めていた「高級路線」への回帰も難しくした。
大塚家具の株価とみると、セール終了後の12月6日に334円を付けていた株価は、同20日には年初来安値の250円に値下りした。
そうしたことがあってか、大塚家具は2018年12月、中国家具販売大手の「イージーホーム」との業務提携を発表。イージーホームは中国全土で223の店舗を運営。売上高は1兆円に迫る。イージーホームとの提携により、中国本土への出店や訪日中国人向けの家具販売などを展開していく方針を打ち出した。
久美子社長の起死回生策は「中国市場」ということらしい。
苦戦する久美子社長にエールを送ってきた父
さらに今回、陳海波社長が率いるハイラインズとも業務提携した。ハイラインズは中国のオンラインショピングサイトでアリババグループの「天猫国際」に旗艦店を出店するほか、プラットフォーム「J-mall」を運営。大塚家具は、日中の越境ECビジネスで協力を乞う。
ブランドイメージを棄損した「在庫一掃セール」だが、インターネット通信販売の売上高が前年同月比58.0%増と大きく伸びたことは収穫。これが久美子社長の「越境EC実現」の背中を押したのかもしれない。
そうしたなか、ハイラインズの陳社長が久美子社長に、経営権をめぐって激しく対立した父で創業者の大塚勝久氏と和解するよう提案したことを2019年2月23日付の朝日新聞デジタルが報じた。久美子社長も前向きに検討する意向を示していたと、伝えている。
現在、勝久氏は大塚家具を去り、新たに高級家具販売の「匠大塚」を立ち上げている。ただ、その後も苦戦する久美子社長にエールを送り、アドバイスも辞さない姿勢をみせていた。
朝日新聞によると、陳氏は、創業家が対立したままでは大塚家具のブランド価値を毀損するとの考えを示したうえで、「どちらも高級家具が売りで、客層が同じ。家族で客を奪い合っても仕方がない」と語ったという。
陳氏は大塚家具の資本支援のとりまとめ役であり、その発言力には、さすがの久美子社長も無視できまい。赤字経営が続けば、続投も危うい。父・勝久氏との和解実現の可能性が、急速に高まっているかもしれない。