読売ですら試算を疑問視
日経が記事も長く、見出しもたっぷり取って、全体像を漏れなく表現しているほか、朝日は厳しさを強調、毎日は黒字化が2027年度から2026年度に前倒しになったことを伝えつつ、高成長が前提とくぎを刺し、読売は黒字化前倒しの事実を淡々と伝えるだけ――というように、見出しから受ける印象は微妙に違った。
社説は公表直後に朝日、読売、毎日が掲載。まず、総論的評価は、朝日が「達成の道筋が、まったく見えない」「歴代最長の在任期間が視野に入る首相。その責務からなお、逃げ続けるつもりなのか」、毎日は「借金まみれの危機的状況に向き合わず、放漫財政を正当化するだけとしか思えない」とバッサリ。読売も「将来試算が多少改善したからと言って、日本の財政事情が厳しいことに変わりはない」「試算の前提が、楽観的過ぎると見られても仕方あるまい。財政規律が緩み、収支改善がさらに遅れる恐れもあろう」と、朝日や毎日より言葉遣いはマイルドだが、試算を疑問視する点に違いはない。
そのうえで、朝日は第2次安倍政権の財政規律への姿勢を疑問視し、特に「景気回復が続きながら、歳出抑制が緩みがちな補正予算を10回組んだ。法律で決まっていた消費税の増税は、『新しい判断』などとして2度延期した」と批判。毎日も「黒字化は首相の自民党総裁任期が終わる21年より先だ。今回の見通しは健全化が進んだように見せかけ、首相は大盤振る舞いができるからくりとみられても仕方がない」と、歳出拡大への誘惑に負けないか、疑念を強調する。
読売は「名目成長率が1%台半ばで推移する試算も示した。......こちらの試算を主たるシナリオに位置付け、財政健全化の方策を練るべきではないか」と、堅実シナリオでの政策立案を求める。
歳出改革の必要の指摘も共通で、「社会保障を持続可能なしくみとするため、受益と負担のバランスをどうとっていくのか......待ったなしの政治課題のはずだ」(朝日)、「団塊の世代が75歳以上になり始める22年度からは社会保障費が急増する。......歳出抑制に本腰を入れるべきだ。」(毎日)、「数値目標を含む新たな社会保障と税の一体改革が必要だ」(読売)などと、3紙とも危機感溢れる書きぶりだ。