政府が中長期の財政に関する最新の試算をまとめた。財政健全化の指標である国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)の赤字は2025年度に1.1兆円まで減り、黒字化の時期も、これまでの試算より1年前倒しして、2026年度とした。ただ、「ありえない」ような高い経済成長を前提にしており、新聞各紙からは「実現不可能」どころか、さらに悪化する懸念も上がる。
1月末の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に内閣府が提出した。財政試算は毎年1月と7月の2回、直近の経済見通しなどをもとに改定している。
「最大限うまくいった場合」という前提条件付き
まず大前提として、安倍政権は2025年度PB黒字化を目標に掲げている。しかも、2020年度黒字化の歴代内閣が踏襲してきた目標を、2017年の衆院解散の際に2025年度に先送りしたものだ。そして、前回2018年7月の試算では、黒字化は先延ばしした目標よりさらに2年遅れて2027年度としていた。
そして今回の改定では、前回以降に決まった2019年10月の消費税増税に向け同年度予算案に盛り込んだ約2兆円の経済対策などの歳出増の一方、同年度予算案で、医療や介護など社会保障費の増加額を約4800億円と要求段階から1000億円以上圧縮するなど歳出抑制策も織り込んでいる。
その結果、2019、20年度のPB赤字は前回から拡大するが、消費税増税の経済対策がなくなる2021年度以降のPBは前回より改善するとした。2025年度PB黒字化という政府目標は引き続き実現しないが、それでも2025年度の赤字幅は1.1兆円と、前回試算の2.4兆円から半分以下に縮小すると見込んでいる。黒字化の達成時期も前回試算の2027年度より1年早い2026年度に前倒しできるとした。
こう書くと、事態は改善しているような印象があるが、試算の前提をよく見る必要がある。内閣府自身が、「政府の経済政策などが最大限うまくいった場合」と認めるもので、2019~2022年度の国内総生産(GDP)成長率は物価変動の影響を除いた実質で1.3%~1.7%、家計の実感に近い名目成長率は2.4~3.0%で推移するとしている。そして2023年度には実質2.0%、名目3.4%という数字を示すが、名目3%以上というのは、実にあのバブル期以降はほぼ見られない水準だ。