江崎グリコのデザート飲料「ドロリッチ」が、2019年3月に生産を終了する。
発売当初は「チルドカップ飲料の異端児」と呼ばれ革新性が高く評価されたが、人気は続かず。専門家は下火となった理由を「ステルス性」にあると見る。
売り上げのピークは2009年
07年10月に「新感覚の飲むスイーツ」とのコンセプトで発売されたドロリッチ。飽和気味だったチルドカップ飲料市場で「デザートスイーツ」という新たな需要を生み出し、女性を中心に支持を集めた。ツイッターでは「ドロリッチなう」と投稿するのが流行するほどだった。
江崎グリコのロングセラーブランドに育つかに見えたが、そう甘くは無かった。ニュースサイト「教えて!gooウォッチ」の17年5月30日付記事「ドロリッチが別次元の極上スイーツに 新旧責任者が明かす開発秘話」によれば、売り上げのピークは2009年で、最近の売り上げはピーク時の10分の1まで落ちていたという。
同社の事業報告書からも苦境ぶりが伝わる。11~12年度のドロリッチの売上は前年を下回り、13年度に持ち直すも、以降は低迷が続く。15、16年度には2年連続で「ドロリッチ」ブランドの再生を掲げたものの、叶わなかった。
江崎グリココーポレートコミュニケーション部の担当者は19年2月22日、J-CASTニュースの取材に、生産終了の理由を「発売当時と比べて競合する商品が登場してきたため、競争激化で売り上げが減少したためです。色々と策は講じましたが、売上の回復ができませんでした」と話す。
「サイレント容量減少が原因でしょ」
V字回復に向けた策の一つが商品リニューアルだ。
同社によれば、発売以降、パッケージの見直しなどマイナーリニューアルを50回以上行い、14、15、17、18年にはコーヒー豆の増量やクリームの配合調整など全面リニューアルを4回実施した。
一方で、この施策が買い控えを招いたとの指摘もある。全面リニューアルではいずれも価格は150円に据え置いたものの、発売当初の内容量220グラムから、200、180、120グラムと減らしていった(18年には180グラムに増量)。
価格は据え置いて内容量を減らす手法は、「シュリンクフレーション」や「ステルス値上げ」と呼ばれる。同社は「実質値上げのようなお客様を欺くような意図は一切なく、リニューアルのたびに商品価値の向上を図ってきました」とするが、生産終了の報道が流れると、SNS上では「サイレント容量減少が原因でしょ」「220g 150円→120g 150円はやりすぎ」といった声が少なくない。
専門家「量で価格調整は企業心理として理解できる」
消費者庁が18年7月に発表した約1400人を対象にした物価モニター調査では、「3年前と比較して実質値上げが増えたと感じる」と回答した人は80.8%に上った。また、「日常的に買っている商品について、実質値上げが原因で買う商品を変えた(又は買うのをやめた)ことがある」は23.9%、「実質値上げは不誠実だと感じる」は22.6%を占めた。
学習院大の上田隆穂教授(マーケティング)は取材に、ドロリッチのリニューアルについて「競争の激しい中で、単独値上げになると目立ち、ロイヤルユーザー率が低いとすぐ顧客スイッチがおこり、客離れがおこる。なので目立ちたくないので価格をいじらず、量で価格調整は企業心理として理解できる」とするも、
「そのステルス性が企業への反発となった可能性があります。ロイヤルユーザーは、『信じていたのに、こっそり量を減らすなんて許せない』というような感情的な反発が顧客離れにつながった可能性も高いです。だまし討ち的な感覚から、高い信頼を寄せていたロイヤルユーザーには特に感情的な反発を生んだということです」
と指摘する。
(J-CASTニュース編集部 谷本陵)